Dr.中川のがんから死生をみつめる:/35 「肝炎対策基本法」に期待

Dr.中川のがんから死生をみつめる:/35 「肝炎対策基本法」に期待

11月30日、「肝炎対策基本法」が成立しました。肝炎は、国内最大の感染症といわれ、肝炎ウイルスが主な原因です。しかし、肝炎ウイルスは、単に肝炎の病原体となるだけではなく、肝細胞がん(肝臓自体の細胞からできるがんで、肝臓にできるがんの9割を占める)の原因となる点が、非常に重要です。

 肝炎ウイルスには、A、B、C、D、Eなどさまざまなタイプがあり、肝細胞がんの原因となるのは、主にB型とC型です。日本では、肝細胞がんの80%がC型、15%がB型の肝炎ウイルスによって発生します。

 肝炎ウイルスに持続的に感染することによって炎症がおき、肝細胞の遺伝子に突然変異が積み重なった結果、肝細胞がんが引き起こされます。子宮頸(けい)がんの原因が、性交渉によるヒトパピローマウイルスの感染である点とよく似ています。

 肝炎ウイルスの感染経路はいくつかあります。一番多いのは、肝炎ウイルスを含んだ血液の輸血によるものです。しかし現在、B型、C型のウイルスが含まれる血液は輸血には使われません。このため、輸血による感染は激減しています。

 他に、注射針などによる感染もあります。医師や看護師が、採血などで、肝炎ウイルスを含む血液がついた針を誤って自分に刺してしまう「針刺し事故」や、集団予防接種や鍼灸(しんきゅう)治療などでの針の使い回しなどが考えられます。予防接種による感染は、現在は十分な対策が取られていますので心配ありません。一方、麻薬の注射や入れ墨でも、針の使い回しがみられ、実際、入れ墨を入れた人や、麻薬常習者では肝炎ウイルスへの感染が高率になっています。

 輸血や予防接種での肝炎ウイルスの感染は大きく減っているので、肝臓がんも今後減少するでしょう。それでも、約350万人ともいわれるウイルスによる肝炎患者、ウイルス感染者の人たちは、肝がんの「高危険群」といえます。これらの人たちのためには、肝炎対策基本法による救済が必要です。

 元薬害肝炎九州訴訟原告の福田衣里子衆院議員をはじめ、多くの方が基本法の成立に尽力されました。この場を借りて、エールを送ります。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

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