生きる:小児がん征圧キャンペーン 第25回日本小児がん学会・合同シンポ

生きる:小児がん征圧キャンペーン 第25回日本小児がん学会・合同シンポ

 ◇10代の死、悩み深く どう向き合い、支えるか
 第25回日本小児がん学会が11月27~29日、千葉県浦安市の東京ベイホテル東急で開かれた。小児がんや血液疾患の患者が幸せに、元気になってほしいという願いを込めた「君の笑顔 みんなの夢」をテーマに、日本小児血液学会や日本小児がん看護学会と同時開催された。今では7割が治る小児がんだが、後遺症や治癒後の自立など多くの問題が残されている。一方で、治癒が望めない子どもがいるのも事実だ。患者本位の医療のあり方や、支援に向けた医師や看護師、ソーシャルワーカーの発言などを紹介する。【文・田村彰子、写真・塩入正夫】

 学会期間中、患者支援団体「がんの子供を守る会」と日本小児がん看護学会が開いた、合同シンポジウム「10代患者の死をめぐる問題」。理解や意思決定が可能な10代患者のケアについて、医師や看護師、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)などさまざまな立場から、意見が出された。

 ◇母性と父性が必要--医師・小沢美和さん
 10代の患者は、大人を診ている人には理解しにくい部分をたくさん抱えている世代。自分を確立していく発展途上の時期で、とても不安定な状況に置かれている。その不安定な時期に、生と死を理解しようということは、さらに不安定さを抱え込むということを踏まえなければならない。

 揺れ動く彼らをしっかり受け止めて、「大丈夫だ」と支える母性と、現実に向き合うよう導く父性が必要だと思う。死の概念の発達は、10歳を超えるとほぼ成人と同じくらいになるといわれるが、子どもによって幅もある。子どもがどれぐらい死を考えているかを個々に見極めて会話し、彼らが求めている情報を伝えていかなければならない。信頼関係が土台となり、生と死という不安定で大きな問題を彼らは自分の中に何とか取り入れて、死を迎えているのではないかと考えている。

 ◇答えはベッドサイドに--看護師・田村恵美さん
 子どもは、自分自身で痛みや苦痛を訴えにくいところがある。特に思春期は心身共に成人へ移行し人間関係を形成していく時期であり、私自身も難しさを実感している。

 エンドオブライフのなかで、看護師としてどう支えていくかと考えたとき、その子と向き合うこと▽共にいること▽看護師として自分の持っている力を最大限出すこと▽生きる力を支えること▽希望を持ち続けること▽命を尊重すること--などが必要なのではないか。私たち医療者は、患者などに何を言われるか分からず不安になった時、ベッドサイドに行きづらいということを経験する。看護の専門職として自分が何かをしなければならないと迷った時は「必ず答えはベッドサイドにある」と信じ、命と向き合える自分でありたいと思っている。

 ◇同室の子どもの死への対応--CLS・早田典子さん
 病棟で子どもが亡くなった時、年齢にかかわらず残された子どもも親もさまざまな反応を示す。メールなどの普及により、動揺は病棟だけではなく外来や訪問学級にも広がる。こうした家族の反応を、医療者がどうサポートするのか考える必要がある。一方で、子どもを亡くした親の考え方に配慮することも大切だ。

 同室の子どもの死に、残された子どもたちはさまざまな喪失反応を示す。アルバム作りをしたりすることで、気持ちを整理し、心の中に亡くなった子どもを再配置することの手がかりにもなる。自我確立期にある思春期の子どもへのグリーフケア(悲嘆への支援)は、友人の死を伝えるタイミングの配慮や、伝えた後の心理、社会的背景を考慮した多職種による精神的なサポートが必要だ。

 ◇セカンドオピニオンの相談多く--ソーシャルワーカー・樋口明子さん
 昨年度の相談件数は、延べ約1万8000件で、多くは母親からの相談だが、最近では本人からの相談も増えている。治療中から本人の相談を受けるケースもあるが、それは10代の患者が中心になっている。

 治すことが難しくなってきた段階になると、セカンドオピニオンの相談が多い。「もう治すことが難しくなった」というのをどう伝えるかという葛藤(かっとう)を、医療従事者に理解してもらいたいと思う家族も多い。

 みんながお互いのことを思いやって頑張りすぎるからこそ、歯車がかみ合わないということが10代の患者の場合には多いと思う。ソーシャルワーカーは、兄弟や親の支援をし、家族がどう患者を支えていくかを一緒に考える立場にある。今後も患者家族と一緒に、エンドオブライフの局面を考えていきたいと思う。

 ◇子どもの死受け入れられず--患者家族・遠藤洋子さん
 娘は小学5年で白血病を発病し、6年半の闘病の間に5回の再発を繰り返した。5回目の再発の時は、いつもと違うと感じていた。

 医師に「これ以上続けると本人にとって苦痛でしかない」と言われたが、治療を止めることは死が迫ってくることだと恐怖を感じた。覚悟はあったつもりだが、目の前に自分の子どもの死があるということを、どうしても受け入れられなかった。余命を宣告したことで、娘の気力がなくなったらと思うと怖かった。

 医師や看護師は最善を尽くしてくれたと思うが、その時はそれが分からないほど精神的に不安定だった。子どもと一緒に死と向かい合って話し合い、いい時間を持てる家族はいると思う。一方で、精神的に不安になって話す勇気がない私たちのような親もいる。家族のことも考えてサポートしてもらいたいと思う。

 ◇ターミナル期のケア「ガイドライン」を検討--ワークショップ
 「がんの子供を守る会」のワークショップでは、「ターミナルケアのガイドラインを作ろう」をテーマに意見が交換された。

 小児がんの治癒率が向上し、子どもが小児がんで亡くなることは少なくなってきたが、ターミナル期のケアへの意識や医療環境の整備は十分とはいえない。そこで同会では、来年の発行を目指して検討を進めてきた。

 今回は、ガイドラインのうち「子どもの心に寄り添って」と「ターミナル期の過ごし方」の項目について文章を提示。「告知が前提になっているのでは」「緩和ケアは、思いがあれば通じるのではないか」「『~してあげる』という言葉はどうか」--などと子どもを亡くした家族や医師、看護師らがさまざまな意見を述べた。

 ガイドライン作成委員会の細谷亮太聖路加国際病院副院長は「ガイドラインができることで、治っていく子どもたちの親でも、治らなかった子どもたちのことを考えてもらえれば」と話した。

 ◇思い届いた? がんの子ども絵画展
 大好きな家族や空の下のサッカーボール、夢を叶(かな)えてくれるクジラ--。会場1階では小児がんの子どもたちの絵画展が開かれた。全国から集められた47点が展示され、力強い絵に見入る人たちが絶えなかった。

 ポスターにもなった「いつでもいっしょだよ」は、東京都大田区の井田裕太君が、2歳6カ月の時に描いた作品だ。裕太君の小さな手形で、当時のえとにちなんだ鳥の「お母さん」を表し、「子どもたち」を指で表現した。裕太君は3歳7カ月で亡くなった。両親は、作品に「このにわとりさんとひよこさんたちのように、いつでも一緒だよ」とメッセージを寄せている。

 ボランティアで絵画展に参加した、母の正美さん(37)は、「裕太が残していってくれたものが、こういう形で伝えていけたら」と話していた。

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