子宮頸がん もう怖くない 日本にも予防ワクチン 豪州の開発者に聞く

子宮頸がん もう怖くない 日本にも予防ワクチン 豪州の開発者に聞く

若い女性の間で増えている子宮頸(けい)がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)の予防ワクチンが厚生労働省に承認され、二十二日から医療機関で接種を受けることができるようになる。がんを予防できるワクチンとしては世界で初めてで、それを開発したオーストラリア・クイーンズランド大教授のイアン・フレイザー博士(56)は先月、本田財団の第三十回本田賞を受賞した。博士に単独インタビューした。 (論説委員・日比野守男)

 -HPVの予防ワクチン開発に取り組もうとしたのは。

 一九八〇年代前半からエイズウイルス(HIV)を研究するなど免疫系の疾患に興味があった。そのうちにHIVとHPVの両方に感染している患者がいてHPVにも関心を持つようになった。たまたま、子宮頸がんの原因がHPVであることを発見したドイツがん研究センターのハラルド・ツア・ハウゼン博士(二〇〇八年ノーベル医学・生理学賞受賞)のもとで同僚が研究していて、私がドイツへいったとき紹介してもらった。それがきっかけだ。

 -どのように開発に取り組んだのか。

 九〇年代初め、研究休暇で英国の研究所にいたとき、中国人の分子生物学者・周健博士が客員研究者としてきた。彼もHPVに興味を持っていた。彼は遺伝子の発現やクローニングが得意で、私は免疫システムが専門。一年後オーストラリアの私の大学に招き、分担しながら開発に取り組んだ。

 -途中で開発を断念しかけたことは。

 何度もある。このワクチンではHPVの外皮だけを残し中身を無害な遺伝子に組み替えるが、何度試みても失敗ばかりだった。どこに見落としがあるかを突き止めるのに二年かかった。
-単独受賞だが。

 周博士は一九九九年、中国に帰国中に急死された。どちらか一方が欠けていてもワクチンは完成しなかった。私はワクチンが二〇〇六年に製品化され世界中で接種されるところまでみる機会に恵まれた。二人で受賞できないのが残念だ。

 -ワクチンの効果の持続期間は。

 今は答えが出せない。だが七年間臨床試験をしており、その間抗体は弱まっていない。HPVの感染リスクが高いのは十五~二十五歳であり、十五年間免疫が有効だとすれば、ほとんどの感染を防げることになる。

 -オーストラリアでは接種費用は。

 政府は〇六~〇九年までの間、十二~二十五歳の女性全員の接種費用を全額負担している。十八歳までは学校で、それ以上は医療機関で接種する。一〇年からは学校で十二歳になった女生徒全員に政府負担で接種する。政府は男性にも接種を勧めているが、費用は自己負担だ。

 -今後の研究は。

 16型、18型以外に十種類のタイプのHPVの混合ワクチンについて臨床試験中だ。感染者への治療ワクチンも小規模だが臨床試験中で、HPVを排除できるなどかなりいい成績が出ている。

◆難点は高額の接種費用
 子宮頸がんは二十~三十代の女性に発生するがんの中で最も多い。わが国では毎年新たに一万五千人が子宮頸がんになり、三千五百人が亡くなっている。ほとんどが性的接触によるHPV感染が原因であることが分かっている。

 全女性の七、八割が一度はHPVに感染し、そのうち一部が持続感染の状態になり、やがて、がんに進行する。HPVのうち16型と18型による感染が最も多く、子宮頸がん全体の六~七割、二十~三十代では八~九割を占める。発見が遅れれば命にかかわるほか、助かっても子宮の全摘出のため子供が産めなくなる。

 承認されたワクチンはHPVの16、18型の感染予防が目的で、感染前に接種すれば、がんの発生をほぼ完全に防ぐことが海外の臨床試験で確認され既に百カ国以上で承認されている。

 国内での接種費用は、ワクチン本体の販売価格に診察費などを加えて四万~五万円(三回接種)になるとみられる。広く普及させるには販売価格の引き下げや他の先進国と同様に公費負担・補助が期待される。

<記者のつぶやき> わが国の子宮頸がんワクチンの承認は、審査の遅れから先進国で最後だ。少子化時代の中で出産年齢の女性のからだを守るために、承認が遅れた分だけ公的支援を手厚くすべきだ。民主党は衆院選の際の政策集で「助成制度」の創設を掲げた。ぜひ実現してもらいたい。

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