中山間地のがん患者 受診遅く「半年以内に終末期」4割 

中山間地のがん患者 受診遅く「半年以内に終末期」4割 

過疎が進む中山間地を診療エリアに含む県内の四つの総合病院で、2007年に終末期と診断されたがん患者のうち4割以上が、がん発見から半年以内で終末期まで進行し、短期間で死に至っていたことが兵庫医療大学(神戸市)の上原ます子教授(地域看護学)ら研究グループの調査で分かった。がんがかなり進行した状態で受診、余命が短い患者が多かったとみられ、都市部に比べて公共交通が不便なことや、受診が遅れがちな住民の意識など中山間地が抱える課題が浮かんでいる。

 国立がんセンター(東京)の垣添忠生名誉総長は「都市部と比べて診断から死亡までの期間が明らかに短い。診断技術以前に、患者の受診が難しいことが一番の原因と考えられる」としている。

 研究グループは「治療によって病状が改善せず、余命6カ月以内と主治医に診断された」状態を終末期と定義。最初にがんと診断されてから終末期に至るまでの期間は、1カ月以内が26・3%、半年以内は41・6%、1年以内は54・0%に上った。がんの診断から死亡までの期間は半年以内が26・3%、1年以内が43・1%を占めた。

 調査は、上原教授が信大医学部(松本市)の保健学科教授だった2007年1~12月に実施。4病院で患者を受け持つ看護師が無記名の調査票に記入し、137人(男性79人、女性58人)分の有効回答を得た。平均年齢は男性76・3歳、女性が78・0歳。男性は肺がん、女性は胃がんが最も多かった。

 調査対象の病院は、北信、中信、南信の各地域から、過疎が進む中山間地を診療エリアに含む基幹病院(150~300床前後)を選んだ。東信地域は、基幹病院の診療エリアが広いため、中山間地の傾向把握が難しいと判断して対象から除いた。

 【都市部とさまざまな格差反映】

 兵庫医療大学(神戸市)の上原ます子教授らの研究グループが実施した調査では、県内の中山間地で、がん患者の受診が遅れる傾向にあることが分かった。「食事や排せつ、入浴などができないほど痛みがひどくなってから訪れる人が少なくない」。研究グループに加わり、調査対象になった中信地域の病院の看護師はこう話している。

 この看護師によると、ある患者は入院後わずか3週間で死亡。痛みなどを和らげる緩和ケアに十分取り組めなかったため「苦しくて横になれず、ふらついた足取りで病室をうろうろしていた」と振り返る。

 受診時に、がんがかなり進行しているケースが多いとみられる原因について、上原教授は「自宅から医療機関が遠く、公共交通が不便で、日ごろ通う回数も少ない。地域にも、我慢できるうちは『病院にそんな簡単なことで行くなんて…』という考え方があるのではないか」と指摘する。

 今回の調査では、自宅から病院までの移動にかかる時間も調査。「30分以上」が43・0%を占めた。タクシーで片道1万4千円かけて来院したり、家族に送迎を頼みにくいと考えたりするなど、医療機関を「遠い」と感じる人が目立つこともうかがえる。

 2007年4月に施行されたがん対策基本法は、予防や早期発見の推進など、国や自治体の責務を明記。患者が居住地域にかかわらず、等しく適切な医療を受けられるようにすることを基本理念に掲げている。

 しかし、県内の多くの中山間地では、医療・看護の体制が手薄なのが実情だ。上原教授らが2005年度から2年間、県内128カ所の訪問看護ステーションを対象にした調査では、ステーションが都市部に偏在。中山間地では「危険が伴う」「遠方のため経営上難しい」などの理由で訪問看護サービスが行き届かない地域があった。

 今回、がん患者の調査対象となった南信地域の病院の看護部長は「病院の訪問看護師は2人。1軒を回るのに1時間ぐらいかかるのであまり回れず、慢性的な人材不足」と明かす。

 山間地で在宅医療に携わってきた下伊那郡泰阜村診療所の池田忠所長は「中山間地では、専門的医療ばかりではなく、患者を継続的に診るかかりつけ医が大切。病院と診療所、介護と医療の連携など包括的なケアの取り組みが欠かせない」と話している。

トラックバック&コメント

この記事のトラックバックURL:

まだトラックバック、コメントがありません。


がん患者ら交流を 旭川厚生病院、サロン開設 »
« がん体験をデータベース化 21日ネット開設