がん治療体験 対局に見立て紹介

がん治療体験 対局に見立て紹介

増穂町出身の永世棋聖、米長邦雄さん(66)が、自身の前立腺がん治療体験をまとめた「癌がんノート 米長流 前立腺癌への最善手」(ワニブックス・798円)を出版した。日本将棋連盟の会長職も3期目となり、変わらず西に東に奔走する日々を送る米長さん。同書に込めた思いや今後の抱負を聞いた。〈川手 一正〉

 米長さんは同書の執筆について、「がんの出方を見て、どう戦略を立てて、どう行動したか。がん治療の体験を将棋に見立てた」と語る。同書中で、前立腺がんの治療に対してアマチュアである米長さんを支えながら、指導し、アドバイスする“プロ棋士”の役割を果たしているのが、東京女子医科大の放射線治療医・秋元哲夫准教授だ。
 同書は米長さんが1月から公開しているホームページのコーナー「癌ノート」に掲載した内容を基に、秋元准教授が解説を加えているのが特徴。米長さんの体験談と並んで、前立腺がんの有無を判断する基準となる前立腺特異抗原(PSA)検査、米長さんが受けた治療法「高線量率組織内照射(HDR)」など専門的な用語についての説明を掲載している。

◆多忙な日々送る
 もし患者になったら「お金はどれくらい必要か」「治療に痛みは伴うのか」「治療後、仕事に復帰できるのか」「後遺症はあるのか」などと、医師に聞きにくい悩みは尽きない。自身の実体験を包み隠さず明らかにした上で、米長さんは「患者目線でつづったわたしの体験談に医師の解説を加えることで、いわばアマチュアとプロの視点のバランスが取れた本にしたかった」と同書の意図を強調する。
 同書では5月、3期目の日本将棋連盟会長に立候補した経緯にも触れている。「子どもの将棋人気が高まっている今こそ、普及活動を推進したかったから」という。会長職は、毎月2回の全国の支部回りなど出張が多く、多忙で「やりがいのある仕事」。現在の米長さんを突き動かしているのは、「もっと子どもたちに将棋をやってほしい」という純粋な思いだ。
 日常生活も大きく変わらない。食事では好きな物が食べられないこともあるが、仕事から帰ったら家でビールを飲むのが何よりの楽しみという。「今思えば心身共に、1年前よりも健康になった。以前より野菜を多くとるようになり、前立腺がんが食生活を見直すきっかけになった」とほほ笑む。

◆啓発活動に意欲
 米長さんは治療を終えた今でも3カ月に1度、PSA検査を受けることを欠かしていない。実は、PSA検査は検査の有効性は実証されているものの、「尿の出が悪い」「前立腺が肥大気味」といった症状がない人を含めて実施すべきかどうかは費用面からの議論があり、十分に普及しているわけではないという。それでも検査がきっかけで前立腺がんと分かった経験から、米長さんは「PSA検査は自分の体を知ることができる唯一の情報」と検査の必要性を強調する。
 今後は、前立腺がんに関するパネルディスカッションやイベントに積極的に参加し、患者視点からPSA検査の大切さを訴えていくつもりだ。「できることなら『患者の会』の立ち上げにもかかわっていきたい」と前立腺がんを経験した米長さんの活動は、これからさらに幅を広げそうだ。

【よねなが・くにおさん 1943年、増穂町生まれ。63年にプロ昇格し、85年、永世棋聖に。93年に49歳11カ月という最年長で名人位を獲得し、2003年に引退。05年から日本将棋連盟会長を務めている。前立腺がんの治療体験や自身の思いを日記スタイルで掲載している癌ノートは09年1月から随時更新。癌ノートはhttp://www.yonenaga.net/gan.html】

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