井上隆さん(58)=行橋市 がんと闘い海外登山 /福岡

井上隆さん(58)=行橋市 がんと闘い海外登山 /福岡

◇「生ある限り挑戦続ける」
 「転移、再発の可能性がある。5年後の生存率は40%」

 2年半前、健康診断でスキルス胃がんと分かり、胃の4分の3を摘出した際に医師から受けた宣告だ。

 「ショックでした。しかし、人生に悔いを残すまい、やりたいことは早めにやろう、と思いました」

 20代から登山を続ける山男は海外挑戦を決め、一昨年5月にヒマラヤのアイランドピーク(6160メートル)、昨年9月は欧州のモンブラン(4810メートル)の登頂に成功した。モンブランは足の付け根に転移したがんの切除手術から1カ月半後のアタックだった。

 「手術で切開した腹部をかばって前かがみで雪原を歩き、氷の絶壁をよじ登った。腰が痛み、高山病に襲われたアイランドピークを上回る苦しい登山でした。山頂で青空を見上げた時、達成感で涙が止まらなかった」

 県立豊津高(現育徳館高)、福岡大を経て73年に井筒屋入社。最初に配属された書籍係の上司に誘われ、社内の山岳同好会へ。長野県の槍ケ岳、八ケ岳など国内の秀峰を踏破する。ただし海外登山の経験はないまま。06年の早期退職後も「国内の山を楽しもう」と思っていた。がんが見つかったのは、その矢先だった。

 「酒好きだったし、マラソンにも挑んだ。無理をしたつけが出たのかもしれません。でも、がんになっていなかったら、海外登山を思い立たなかったでしょう。がんが決意させてくれた」

 がんに関する本を約50冊読破し、三つの医療機関で抗がん剤の投薬と免疫治療、漢方治療を受けている。治療費は1カ月約25万円に上り、蓄えと再就職先の貿易会社の収入で工面。ともに暮らす妻、娘、母は「心配だが、思うとおりの人生を送ってほしい」と挑戦を見守る。

 「転移の恐怖は頭を離れないが、できる限りの治療を受け、生ある限り挑戦を続けます。次はキリマンジャロが目標です」

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