ナガサキ平和リレー:/169 被爆者がん研究、一般医療にも貢献 /長崎

ナガサキ平和リレー:/169 被爆者がん研究、一般医療にも貢献 /長崎

「被爆者の研究は被爆者医療の向上だけでなく、一般の医療研究にも普遍化できる『現在』の研究です」

 長崎大原爆後障害医療研究施設(原研)生体材料保存室の中島正洋准教授(44)は、約10年にわたり被爆者の発がんと放射線の関係を研究してきた。

 その中で明らかになってきたのは「1発の原爆により、被爆者の発がんリスクが65年も継続している」。放射線の感受性が最も強い幼少期に被爆した若年被爆者が発がん年齢を迎えた今、研究の重要性を実感する。

 佐賀県武雄市出身。医師だったおじを見て、小学生のころから医師を目指した。原研や熱帯医学研究所など特色ある長崎大医学部に進み、その中でも「幅広く学べる」と基礎研究を専門に選んだ。

 初めて被爆者の臓器に触れたのは、大学院生の時。原爆小頭症の男性の解剖だった。本来あるはずのない場所に脳の神経細胞を発見し、放射線の影響を目の当たりにした。

 中島さんは、08年に設立された「被爆者腫瘍(しゅよう)組織バンク」プロジェクトの責任者も務める。13年春の本格運用を目指し、これまでに被爆者約190人分のがん組織を採取し、凍結保存してきた。

 プロジェクトの特徴は、凍結した新鮮試料をインターネット上で公開し、必要な研究者には無料で試料を提供する点だ。急速冷凍した試料は半永久的にDNA情報が保存され、研究に利用できる。「被爆者の腫瘍組織は長崎と広島の『負の遺産』。貴重な情報を公開することに大きな意味がある」

 09年には被爆者の皮膚がんを解析し、近距離被爆者ほど、DNAに多くの傷が付き、がんに結びつきやすいという結果も得られた。

 しかし、こうした基礎研究や組織バンクの継続は、人材不足のため不安定となる懸念もある。目に見える成果がすぐに出にくい基礎研究は敬遠されがちで、さらに04年に導入された新しい臨床医研修制度により、地方大学の付属病院に残る研修医が激減しているためだ。

 若い研究者をひきつけるには「被爆者研究を一般のがん研究へと普遍化する必要がある」と中島さんは考える。「われわれは、被爆者の貴重なデータを使わせてもらい、発がんメカニズムを研究している。それが解明できれば、被爆者医療だけでなく、がんの早期発見や治療にもつながる」。研究をさらに深める努力が続く。

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 「ナガサキ平和リレー」は毎月9日に掲載します

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