膵臓がん(5)闘病ブログに思い込め

膵臓がん(5)闘病ブログに思い込め

進行して見つかることが多い膵臓がんは、当事者の声や信頼できる情報が少ないといわれる。「患者や家族は情報を求めて右往左往するが、治療の難しいがんだからこそ迷っている時間はない。正確な情報を早く入手しなければ」。実体験からそう感じた東京都大田区の木下義高さん(61)は、他の患者にインターネットを使った効率的で正確な情報収集法を教えるなど、自ら積極的に情報発信する数少ない患者だ。

 2007年6月、膵臓がんとわかった。血糖値が急に上がり、腹部の超音波検査で膵臓に影が写った。00年に直腸がんの治療経験があったせいか、意外にも冷静に受けとめられた。

 早速、ネットを駆使して調べてみた。生存率や手術できる患者の割合、最新の治療動向など。データを頭に入れて専門病院を受診し、月末の手術予定を入れた。がんは25ミリで転移はなさそう。手術できる段階で見つかる確率は10~20%とされる膵臓がん。知識があっただけに「できるうちに手術すべき」と即決。詳しい検査から2日後のことだった。

 家族にはその後、自ら打ち明けた。落ち着いて説明すると、目を赤くしながらも、静かに聞いてくれた。「自分で情報収集していたからこそ迷わず決断し、納得して治療に臨むことができた」と振り返る。

 検査を受けたころから、「膵臓がんサバイバー(生還者)への挑戦」というブログを始めた。記録することで、揺れ動く気持ちを整理したかった。仕事はエンジニアでパソコンは得意。内容は、治療経過、最新の治療事情、ネット活用術、本の紹介と幅広い。いつしか患者や家族から「欠かさず読んでます」と言われるようになり、張り合いが出てきた。患者を対象にしたネット活用術の講演も頼まれた。

 「膵臓がんになり、勉強したいテーマができて楽しみが増えた」という木下さん。再発の不安はあるが、これまで通り会社役員の仕事を続け、趣味のチェロを楽しんでいる。

 直腸がんの切除後は、半年間、人工肛門の生活を送った。その後、腸をつなぐ手術を受け、再び自分の肛門で排せつできるようになった時、「生きててよかった」と涙が出た。「2度もがんになり命拾いしてわかったのは、目の前の生活をいかに豊かに生きるかが一番大切だということ」。それが、患者仲間にぜひ伝えたいメッセージでもある。

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