生きる:小児がん征圧キャンペーン 2010若い命を支えるコンサート

生きる:小児がん征圧キャンペーン 2010若い命を支えるコンサート

◇音楽が大きな力に
 小児がん征圧キャンペーンのチャリティーコンサート「生きる~2010若い命を支えるコンサート~」(毎日新聞社、クラシック・ヨコハマ推進委員会、横浜市主催、ファンケル特別協賛)が1月23日、横浜市西区の横浜みなとみらいホールで開かれた。昨年11月から始まった「クラシック・ヨコハマ」のフィナーレを飾る舞台では、バイオリニストの前橋汀子さんや昨年6月に米国のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さんらが美しい音色を響かせ、病気を克服した子どもたちやその家族など約2000人の観客を魅了した。趣旨に賛同して出席された皇后さまも、子どもたちに笑顔で手を振り、励まされた。【文・田村彰子、写真・馬場理沙】

 午後2時すぎ、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の前に、指揮者の円光寺雅彦さんと鮮やかなオレンジのドレスに身を包んだ、第63回全日本学生音楽コンクール全国大会バイオリン部門小学校の部1位の辻彩奈さん(12)=岐阜県大垣市立青墓小6年=が登場した。小柄な体で、サンサーンス「序奏とロンド・カプリッチョーソ作品28」を堂々と奏でると、その力強い旋律に観客が引き込まれていった。

 船橋市の佐々木貴子さん(36)は、最前列から大きな拍手を送った。佐々木さんは、11歳のときに脳腫瘍(のうしゅよう)を発症、克服した今も通院を続け、薬を飲み続けている。「足を痛めていたり、悩むこともあるけれど、演奏をきいて『頑張らないと』と思った」と晴れやかな顔で話した。

 続いてタキシード姿のピアニスト、辻井伸行さんが登場すると、会場から一層大きな拍手がわいた。ショパンの「ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11」を力強く、繊細に演奏。全身で奏でるような演奏に、目頭を熱くする観客もいた。演奏が終わると、会場からは「ブラボー」の声が起こり、観客らは身を乗り出して拍手をした。

 最後は、バイオリニストの前橋汀子さんが、美しい赤のドレス姿で登場。メンデルスゾーンの「バイオリン協奏曲ホ短調作品64」を深みのある、豊かな表現力で演奏した。

 「クラシックのコンサートに来るのは初めて。きれいで、迫力があって圧倒された」。最前列で熱心に聴いていた、埼玉県の中学1年、山田瑞季さん(13)は今回のコンサートを楽しみにしていた。山田さんは昨年7月、当時11歳だった妹の明音(あかね)さんを脳腫瘍で亡くした。父と母と家族3人で初めて足を運んだコンサート。会場では、明音さんも近くで一緒に聴いているように感じたという。

 将来は、作業療法士になるのが夢だ。一生懸命リハビリをする明音さんをビデオで見て、「妹のような人をひとりでもお手伝いできれば」という思いを強くしたという。「家族4人で聴くことができた、すてきなコンサートでした」と笑顔で話した。

 ◇「病気に負けない」 終演後、子供たちと出演者が交流
 「すてきな演奏をありがとうございました」。コンサート終了後、子どもたちは舞台裏を訪ね、演奏者たちとの交流を楽しんだ。招待された子どもたちは、演奏者たちに「ありがとうございました」と花束を贈った。

 東京都世田谷区の高校3年、岡野亜美さん(18)は、辻井伸行さんの母校の都立久我山盲学校(世田谷区)の後輩にあたる。同校は、幼稚園から中学校までの一貫校のため、岡野さんは学芸会や音楽会などで辻井さんのピアノ演奏を聴いていたという。「(辻井さんのピアノは)すごく上手で有名でした」と振り返る。

 高校1年の時に脳腫瘍を再発したが、克服した岡野さんは、辻井さんが同校を卒業してから初めて聴く生演奏を待ち望んでいた。「とても上手になっていて驚いた。素晴らしかった」と興奮した様子で話していた。

 舞台裏で岡野さんは、「辻井さんに似ているから」と選んだ、白クマのぬいぐるみと手紙を手渡した。手紙は、墨字で書いたものと、母の美映子さん(44)と協力して書いた点字のものを用意。手紙には「先輩のピアノを聴くと、亜美はすごく元気になれます。病気に負けないで頑張ります」などとつづった。辻井さんは「後輩がコンサートに来てくれるなんて思っていなかった」と喜んだ。

 世田谷区の高校1年生、吉田ももさん(16)は、小学5年生の時に脳腫瘍で入院し、克服した現在も週に1回通院を続けている。ピアノを習い、地域の吹奏楽団でサックスも担当する吉田さんは「落ち込むとき、どのようにして前向きになりますか」と質問。指揮者の円光寺雅彦さんは、若いころに家族の支えで乗り越えた経験を話し、前橋汀子さんは「落ちたら必ずまた上がっていくもの。音楽が大きな力になってくれた」と語った。

 吉田さんは「音楽で人を幸せにしたい」という夢を持つ。「音楽を通して病気のことを伝えるとプラスのイメージを持ってもらえるので、こういうコンサートはとてもありがたいです」と顔をほころばせていた。

 ◇皇后さまも出席、子供たちに笑顔
 コンサートには、子どもたちを元気づけるため皇后さまも出席された。2階テラス席から1階最前列で鑑賞する子どもたちに向けて手を振り、笑顔でエールを送られた。

 また、コンサートを主催した毎日新聞社の朝比奈豊社長と横浜市の林文子市長も同席。林市長は「昨年11月から40以上のステージを開いた『クラシック・ヨコハマ09~10』のフィナーレを飾る素晴らしいコンサートになった。横浜から世界へ巣立つ若手演奏家を支援するこの意義深い事業を、今後も応援していきたい」と感想を述べた。

 ◇「手や耳でも楽しんで」 会場に宮島さんの原画展示
 コンサート会場には、プログラムの表紙となった、美術家の宮島永太良(えいたろう)さんの原画も展示された。宮島さんが、小児がん征圧キャンペーンの趣旨に賛同し、ポスターやプログラムの原画を描くのは今回で3回目。全盲の辻井伸行さんが出演するということを聞き、「目が見えない方も会場にいるのではないか」と思い、絵のイメージを立体化した模型も一緒に展示した。

 絵は、「青い鳥が病後の赤い鳥を誘って山へ行き、赤い鳥が元気を取り戻す」という宮島さんの詩をイメージしたもの。模型は、知人の視覚障害者らの意見を聞き「彫刻だったら、触って感じることができるのでは」と制作することを決めたという。山は粘土、虹は和紙、鳥は布で表現。絵に添えた詩はテープにも吹き込まれ、耳でも楽しめるような工夫がされた。

 宮島さんは、4月には中国・上海でチャリティー個展を開催。若い作家を支援する活動も展開する。今回の原画は、医療にかかわる施設などに寄贈する予定で、「今後もいろいろな人の意見を聞き、みんなが楽しめる作品を制作していきたい」と話している。

==============

主催   毎日新聞社、横浜市、クラシック・ヨコハマ推進委員会

特別協賛 ファンケル

協賛   協和発酵キリン、JR東日本、東日印刷、毎日ビルディング

協力   横浜みなとみらいホール

==============

 小児がん征圧募金を呼びかけています。送り先は〒100-8051 東京都千代田区一ツ橋1の1の1、毎日新聞東京社会事業団「小児がん征圧募金」係(郵便振替00120・0・76498)。お名前、金額などを紙面に掲載しますので、匿名希望の方は明記してください。

トラックバック&コメント

この記事のトラックバックURL:

まだトラックバック、コメントがありません。


膵臓がん(5)闘病ブログに思い込め »
« アメリカのがん登録】(2)異なる資金の担保