Dr.中川のがんから死生をみつめる:/45 文明が支える「長寿」

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年をとると、時間がたつのが早いと感じるようになります。たしかに子どものころの1年の、なんと長かったことでしょうか。

 生命活動の「テンポ」は、からだが大きいほどゆっくりですが、この関係は人間にもあてはまります。3歳の子どもの心拍は、1分間に120回、呼吸数も25回と、成人よりずっと多いのです。心拍数を基準にすれば、子どもにとっての1日は、大人の倍近くに長くなります。動物と比べると、子どもの時間は、よりネズミの時間に、大人の時間は、より象の時間に近い、というわけです。

 大人になると、からだは大きくはなりませんが、体外から取り入れた物質から他の物質を合成したり、エネルギーを作る「代謝」は落ちてきます。中年になると、若いときと同じものを食べても太ります。吸収した栄養の消費が落ちるからです。傷も治りにくくなります。運動後の筋肉痛が、数日たってから起きるのも、代謝の遅れが原因です。つまり、私たちの場合、大人になってからだの大きさが変わらなくなっても、生命のテンポは着実に遅くなっていくのです。1日の長さが、どんどん短く感じられるようになる背景には、この代謝機能の老化があるのではないかと思います。

 さて、どんな動物も、一生の間に心臓が拍動する回数は約15億回で同じと言われます。しかし、ヒトの心拍数は約1秒に1回ですから、2秒に1回の馬や、3秒に1回の象より、本来は短命になるはずです。心拍数からみると、人間の寿命は象よりはるかに短い25年程度になります。たしかに、縄文時代の人類は、15~16歳で子どもを産み、子育てしたら次の世代にバトンタッチしていったと考えられています。

 しかし、現代人の寿命と動物の寿命とを同列に論じるのは無理があります。日本人の平均寿命は、いまや83歳です。安全で快適な都市、安定した食料供給、医療の発達などが、飛躍的に人間を長寿化させた大きな理由といえます。

 たとえば、動物園の象も、入れ歯をすれば、もっと長生きするそうです。現代人の長寿は、文明に支えられていると言えるでしょう。

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