耳鼻咽喉科(4)聴神経腫瘍 脳外科と連携

耳鼻咽喉科(4)聴神経腫瘍 脳外科と連携

 名古屋市の会社員女性(36)は2005年、左耳が詰まり「ブーン」という耳鳴りを感じるようになった。近所の耳鼻科でステロイド薬の点滴治療を10日間続け、耳の違和感は解消されたが、MRI(磁気共鳴画像)検査で、聴神経に腫瘍が見つかった。

 聴神経は、内耳から脳に音を伝える神経だ。腫瘍は良性だが、難聴や、脳に腫瘍が広がれば命を脅かすこともある。しかし、腫瘍が大きくなるスピードは遅いうえ、手術のせいでかえって聴力が悪化したり、聴神経に並行して走る顔面神経のまひが起きる恐れもあり、手術するかどうかの選択は難しい。

 名古屋市立大病院耳鼻咽喉科教授の村上信五さんは「腫瘍の危険性をどう考えるかは人それぞれで、手術するかどうかは本人の希望によるところが大きい」と話す。

 会社員女性の腫瘍は1センチ程度と小さく、聞こえ方に問題はなかったため、すぐには治療せず様子を見た。だが10か月後の検査で2ミリほど増大が進んでいたことから、06年11月、同大病院で手術を受けた。

 手術は耳の上の頭蓋骨を切開し、腫瘍を摘出する。昔は手術で内耳が損傷されて聴覚が犠牲になっても、顔面神経まひが回避できれば十分とされた。近年、MRI検査で小さな腫瘍も見つかるようになったこともあり、耳鼻咽喉科と脳神経外科が連携して、内耳を温存できる例が増えている。女性の手術は成功し、聴力は変わらず、顔面神経まひもない。

 聴力が良好でも、腫瘍が内耳から脳の側へ1センチ以上入り込んでいれば、主に脳神経外科が担当し、後頭部を切開して手術する。

 また、難聴がかなり進んで回復が見込めない患者では、聴覚はあきらめ、耳の後ろから切開する手術が用いられることもある。放射線治療もあるが、腫瘍は完全には取り切れないため、「高齢で手術の危険性が高い場合などに限るべき」と村上さんは話す。

 聴神経腫瘍は10万人に1~2人程度と多くはなく、手術経験が豊富な病院は限られる。村上さんは「脳神経外科や放射線科と連携し、最適な治療を選択できる病院が望ましい」と話す。

トラックバック&コメント

この記事のトラックバックURL:

まだトラックバック、コメントがありません。


PETなど最先端機器導入、がん治療センター開所 »
« 秋田の医療系セラピスト、「明るいがん闘病記」出版-経営者にも好評