ホスピス命学ぶ場 市民団体、子供らへ実習

ホスピス命学ぶ場 市民団体、子供らへ実習

がん患者らの心や体の痛みに寄り添う「ホスピス」を知る取り組みが、学校現場に広がっている。市民団体「佐賀のホスピスを進める会」(宮本祐一代表)が、佐賀市の県立病院好生館の緩和ケア病棟(ホスピス)と連携した学生実習が共感を呼び、会が発足した1998年以降、受け入れ人数は毎年増加している。メンバーは「死を待つ」というホスピスのイメージを取り除き、いつか訪れる自らの「最期」を考えるきっかけにしてほしいと願っている。(伊豆丸展代)
 「命には限りがある。最期まで生きて、生きて、生き抜くことで人は死んでいく」。先月16日、佐賀市の高木瀬公民館で、「ホスピスを進める会」の松本美佐子さん(60)が、高木瀬小学校の6年生ら約240人を前に講演し、ホスピスの取り組みを紹介した。
 入院時、すでに、カリフラワー状に乳がんが皮膚から飛び出し、母親を残して亡くなった36歳の女性、第1子の娘のへその緒を切りたいとの願いをかなえて亡くなった肉腫の20代男性――。松本さんは好生館ホスピスの元看護師長で、多くの人の死と向き合ってきた。患者がホスピスにいる期間は短く、入浴や、子供の体育祭などで外出したいという本人の望みを、医師と相談して最大限かなえてきたという。
 このホスピスでは年間140~150人が亡くなる。観月会など季節の催しをする毎週金曜日の会の活動日には、「いい最期を迎えられたから、支えてくれた皆さんとまた会いたい」と遺族も集まる。
 病棟では、毎年数百人の児童、生徒や医学生らが実習を受けている。患者が最も楽しみにするイベントが、クリスマスの時期にある多久市立東部中(生徒159人、白木直人校長)2年生の病棟訪問。「生と死を考える授業」と題し、1クラスずつ、2週にわたり、歌や手作りのカードを届ける。
 昨年12月11日、2年1組の生徒が病棟に向かった。女子生徒の数名は、病棟に入る時にはもう泣いていた。
 患者の女性を前に、女子生徒(14)は涙で話すことができない。女性はうっ血して細った腕で、生徒の手を取り、「手が冷たいね。ばあちゃんも頑張るけん、しっかりして。悪いね、泣かせて。ハンカチやらんば」と、赤いハンカチを握らせた。この生徒の祖母も3年前、この病院で最期を迎えたといい、「生きることへの色々な考えが巡った。ハンカチは大切にしたい」と言葉をかみしめた。
 翌週の18日。2年2組の生徒らが病棟に入る前、同会の会員で僧侶の山下一徹さん(55)は「先週、泣いている人がいました。でも、病棟では泣かない、我慢して下さい」と告げた。山下さんは第1週のホスピス訪問後、入院患者から「泣かれるとつらい」と打ち明けられていたという。
 「ホスピスは万能じゃない。こちらはよかれと思っていることがそうでないこともある」と山下さんは強く感じている。ホスピスは、日々の生活では忘れがちな「死」がやがて訪れることを実感できる場と考え、今週も同会と病棟は実習を受け入れる。

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