Dr.中川のがんから死生をみつめる:/46 余命には幅がある

Dr.中川のがんから死生をみつめる:/46 余命には幅がある

「時間」は、がん医療でも重大な意味を持っています。がんは20年後に再発するケースもあり、がん完治の定義は一般にありません。ただ、5年間再発がなければ、便宜上「治癒」と考えられます。このため、「5年生存率」を治癒率の代わりに使うことが多いのです。乳がんなどのように、比較的長い期間にわたって再発の可能性があるがんは、「10年生存率」が使われます。

 ただし、この「5年」も「10年」も、数字自体に深い意味があるわけではありません。便宜上、きりのいい数字を使っているに過ぎません。

 また、医療現場では、「余命6カ月」などと、医師が「命の時間」を口にします。最近も、「余命1ヶ月の花嫁」という映画が話題となりました。24歳の末期乳がんの主人公が、夢だった結婚式を挙げ、1カ月後に亡くなるというストーリーです。

 しかし、がん治療の専門医であっても、余命を言い当てることは容易ではありません。

 治る見込みの少ない患者さんに、症状をとる目的などで放射線治療をすることがあります。米国のデータですが、こうした治療をした739人の患者さんの「余命」を6人の放射線治療医が予想し、実際の余命と比較した論文があります。その結果、医師の予想する余命は、あまりあてにならないことが分かりました。

 実際の余命は、医師の予想よりも、全体で平均約3カ月のマイナスでした。つまり、医師の予想は楽観的すぎたことになります。しかし、実際の余命が13カ月以上の場合は、医師は、平均で1カ月半ほど短く予想していました。1年を超える余命がある場合は、医師の予想は悲観的すぎるというわけです。

 「余命1年」という場合、患者の余命を、短い方から長い方に順に並べて、まん中(中央値=患者が計7人の場合は4番目)の数字が「1年」ということを意味します。上の論文が対象とした739人の余命の中央値は約4カ月でしたが、最大値は3年9カ月でした。

 余命には幅があります。データに振り回されるのではなく、がん治療の進め方や人生の仕上げに、データをどう活用するかが大事でしょう。

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