ATL多発が要因か 03―07年の白血病死亡率 九州54市町、全国比2倍超 本紙集計 感染予防 地域で格差

ATL多発が要因か 03―07年の白血病死亡率 九州54市町、全国比2倍超 本紙集計 感染予防 地域で格差

2003―07年の白血病による死亡率について、九州では全国平均の2倍以上の自治体が全241市町村のうち54市町に上り、16市町は6―3倍に達していたことが、西日本新聞の集計で分かった。高死亡率の自治体は離島や沿岸部に多い。多くの専門家は「九州に感染者が多いウイルス性の成人T細胞白血病(ATL)の多発が数値を押し上げている」と指摘。感染者の多い地域でも感染予防の取り組みに格差があるとして、実態調査や対策の実施を訴えている。

 ATLの原因ウイルスHTLV1をめぐっては、厚生労働省特別研究班が母子感染予防のため、全国一律で全妊婦に抗体検査をすべきだとの報告書を近くまとめるが、市町村別の感染者数などの詳しい実態は把握されていない。このため、本紙は九州の全市町村のATLを含む白血病の死者数を記載した厚労省の人口動態統計を入手。高齢化の影響を補正した上で、全国平均を1として死亡率の高さを示す「標準化死亡比」(SMR)を算出した。

 その結果、03―07年のSMRは長崎県では最高6・33倍、佐賀県では6・15倍、鹿児島県では5・81倍の町があった。3倍以上の県別市町数は鹿児島9▽宮崎4▽長崎、佐賀、熊本各1。2倍以上を含めると、鹿児島24▽長崎11▽宮崎7▽熊本6▽福岡、佐賀、大分各2-に上った。

 政令市・県庁所在地のSMRは、福岡市1・83倍▽長崎市1・81倍▽北九州市1・75倍▽鹿児島市1・73倍▽宮崎市1・56倍-の順だった。

 厚労省研究班によると、HTLV1の感染者は全国推計約108万人で、半数近くが九州・沖縄在住とされる。08年のATLによる死者数は、全国1048人のうち九州7県で499人。

 ATLはウイルス感染から発症まで平均55年と長いため、自治体の死亡率の高さは現在の感染者数とは直接結び付かない。高齢化に伴って感染者の発症リスクが増す中、本紙の集計には地域別のリスクを詳しく示すことで、それを反映した対策を促す狙いがある。

 厚労省のHTLV1研究班の渡辺俊樹・東京大大学院教授は、本紙の集計結果について「市町村別のHTLV1感染率やATL患者数など、詳しい実態はまだ分かっていない部分が多い。県単位ではなく市町村単位の死亡率をみることで、あらためて地域差が浮き彫りになった」と評価。「白血病死亡率が高い自治体は、ATLがどれほど影響しているかを調査した方がいい。国は感染防止、発症予防などエイズや肝炎並みの総合対策を講じるべきだ」と指摘した。

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■標準化死亡比(SMR)

 死亡率は単純計算すると高齢者が多い地域で高め、少ない地域で低めに出る。標準化死亡比(SMR)は、各地域の年齢構成を全国平均と同じと仮定し、実際の死亡者数のうち高齢化による「過大」部分などを修正。全国平均を1として死亡率の高さを示す。人口規模による変動を受けにくいため、国や地方自治体が死亡率の分析などに広く活用している。小規模自治体では、統計の有意性を高めるため複数年単位で計算する手法がある。

 九州は小規模自治体が多く、単年計算では死者数が少なくても死亡率が高くなりやすい。このため、本紙は各県が統計情報を公表している最新年の2007年までの5年分のデータを分析。SMR検定の計算式を使い、統計学的にほぼ間違いない数値(95%信頼区間)と判定できる市町村だけを抜き出した。

=2010/03/09付 西日本新聞朝刊=

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