がん患者:本音、知って 悲しみ、つらさ…体験語る活動広がる

がん患者:本音、知って 悲しみ、つらさ…体験語る活動広がる

◇医療現場の参考に/高校で授業、生徒ら共感
 がんを体験した人たちが、さまざまな場で本音を語り始めた。同じ患者や家族、若い世代にも、共感と理解が静かに広がっている。【清水優子】

 <胸が二つあるだけでうらやましかった。子どもに授乳できないのが悲しく、夫婦生活でも夫に申し訳ない気持ちになる>

 <5歳の息子にがんを伝えた。時々「ママを忘れないでね」と言っては、夫に怒られ反省する>

 NPO法人「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(東京都中央区、電話050・3459・2059)は昨年12月から、ホームページ(http://www.dipex‐j.org)で20~70代の乳がん体験者43人の「語り」を、発見▽治療▽再発・転移▽生活▽診断時の年齢--の5項目に分けて公開している。

 登場する人たちは全員匿名で、一部は音声や文章のみだが、大半は顔を出して語っている。英オックスフォード大の取り組みをモデルとしたもので、厚生労働科学研究費の助成を受けた。前立腺がんの体験者にも話を聞いており、近く一部公開する予定だ。

 「がんサポートかごしま」代表の三好綾さん(34)=鹿児島県薩摩川内市=は7年前に乳がんが分かり、乳房を切除。知人にこの活動を教えられ「自分の体験が役立つなら」と08年夏、インタビューを受けた。講演で話したことはあったが、洗いざらい語ったのは初めて。話しながら自然と涙があふれた。「悲しみやつらさを吐き出すことができた。患者の話をじっくり聞く時間のない医師や医学部生にも見てほしい」という。

 インタビュアーはオックスフォード大で研修を受けた臨床心理士や大学講師ら女性4人が担当した。その一人、射場典子さん(46)は、自身もがん体験者だ。東京都内の看護大でがんの緩和ケアなどを教えていた06年2月、卵巣がんが見つかった。治療後、活動に本格的に加わり、患者たちの話を聞いた。「私も本当につらいことは医師や家族にも言えず、同病の友人が頼りだった。サイトを見て、1人じゃないと感じてほしい」と話す。

 ディペックス・ジャパンの佐久間りか事務局長(50)は「いろいろな立場の人の語りから、自分が共感できるケースや情報を探せるはず」と期待する。認知症患者とその家族、がん検診、うつなどのデータベース化も検討中だ。

     *

 がん患者の桜井なおみさん(43)=東京都豊島区=は昨年11月下旬、群馬県伊勢崎市の県立伊勢崎興陽高を訪れ、がんをテーマに授業をした。本紙連載「がんを生きる」で紹介された桜井さんに、生徒たちが感想文を送ったのがきっかけ。高校生約180人が真剣に耳を傾けた。

 桜井さんは37歳の時、乳がんが分かった。手術や治療の後遺症で当時の勤務先を退職し、再就職。昨年末にがん患者の就労を支援する会社を設立した。

 授業では福祉・医療職を志す3年生らを前に、がん患者の多くが以前の職場への復帰を望みながら転職を余儀なくされている現状や、なぜ会社を設立したのかについて説明。「がんになったことに何か意味があるはず。マイナスの経験に価値を見いだし、毎日を大切に生きていこうと思っています」と語った。

 授業を受けた中澤和也さん(17)は「ドラマなどで見るがん患者のイメージと違い、力強く前向きな生き方が心に残った」。担当の中山見知子教諭(43)は「生徒たちががんの問題をより身近に考えるきっかけになれば」と期待する。

 桜井さんは「感想文を読むと、話をしっかり受け止めてくれたようで安心した。教科書の知識だけでなく、生の体験談を聞くことは大事。がんが決して人ごとでないと感じてもらえたらうれしい」と話している。

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