油彩個展:最期に病棟で…乳がん女性夢実現 神保さん、展示翌日に息引き取る /千葉

油彩個展:最期に病棟で…乳がん女性夢実現 神保さん、展示翌日に息引き取る /千葉

◇二科展入選作など38点--来月18日まで、聖隷佐倉市民病院
 佐倉市江原台の聖隷佐倉市民病院の緩和ケア病棟で、ささやかな展覧会が開かれている。油彩画を描いてきた58歳の乳がんの女性が「一生に一度、個展を」と、家族らと病院の応援で19日、二科展の入選作など38点を飾った。その翌日、女性は静かに息を引き取った。【武田良敬】

 最期に夢を実現した女性は八千代市の神保淳子さん。和歌山県出身。宝塚造形芸術大を卒業し、27歳で結婚後、会社員の夫健一郎さん(62)の転勤先の大阪や茨城県ひたちなか市で小学生の絵画教室で教えながら画作を重ね、グループ展も開いてきた。

 乳がんを患ったのは10年前。右胸のしこりに気づいた。手術を断念し、放射線や化学治療で闘病を続けた。生きる励みは絵を描くこと。古里の海辺や家族像、娘の結婚などをテーマに時々の思いを表現。2年前、山口百恵さんの「いい日旅立ち」の詞と汽車をモチーフに大作に挑戦した。闇を蒸気を吐いて機関車が疾走する、連結棒で回転する車輪、前に続くレール……。100号のキャンバスに塗り、削った絵の具が盛り上がる。題は「旅立ち」。「止まったらだめ。希望を持ってゆっくり歩もう」との思いを込めた。具象2作、抽象2作のシリーズを描き、一昨年の二科展に初入選した。

 今年1月、肺が重い症状となり入院。「60歳までに個展を開くのが夢」と主治医の関谷雄一緩和医療科部長に話すと「ここでやりましょう。患者の人生を支えるのも医療の役割」と勧められた。酸素吸入しながら目録や案内状づくりに没頭した。乳がん患者の会の仲間にチラシも配った。

 18日、病室で神保さんは「少しでも生きられるよう頑張りたい。みんなが支えてくれ本当にありがたい」と涙ぐんだ。19日、健一郎さんらが作品38点を搬入し、病棟廊下と談話室の壁に展示した。20日夜、神保さんは家族と車椅子で展示を見て回り「良かったね」と話して床につき、眠るように亡くなったという。

 「生きているわたしの命 さむい冬にも幸せの種は土のなかで育っている」と病室で最後に描いたふきのとうの絵手紙も展示に加えられた。

 個展は追悼の意味も込め、予定通り4月18日まで開かれる。

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