がんのドラマー、舞台に 音楽仲間が支援ライブ 仙台

がんのドラマー、舞台に 音楽仲間が支援ライブ 仙台

ドラマーのケンちゃんは、がんと闘っている。40歳。5年間の治療の末、昨年春、「もう治療法はない」と告げられた。仕事を辞めて家で療養する彼を、音楽仲間がチャリティーライブなどで支援している。大好きな音楽と大勢の思いに後押しされ、ケンちゃんは前へ歩み続ける。(夕刊編集部・安倍樹)

 2月下旬、仙台市青葉区のライブハウス「マカナ」で、9回目の「ケンちゃんAID(エイド)」が開かれた。募金と入場料など収益の一部を支援に当てるチャリティーライブ。ケンちゃんも会場に姿を見せ、1曲だけだが久しぶりにスティックを握った。「ありがとう。みんなに元気をもらったよ」

 ケンちゃんこと一ノ瀬健治さんは、昨年夏まで18年間、ヤマハ仙台店音楽教室のドラム講師だった。
 不調を訴え医療機関で検査を受けたのは2004年末。「胆管細胞がん」と診断され、肝臓の一部を切除する手術を受けた。回復して仕事に復帰したが、1年半後に肺、リンパ節への転移が見つかり、抗がん剤治療を続けていた。

 しかし昨春、主治医に告げられる。「あなたに効く薬はもうない。残された時間は好きなことをして生きなさい」
 「保険適用の治療がなくなり医師に見放された、いわゆる『がん難民』です」とケンちゃん。名取市内のパートナー宅で漢方や食事、温泉治療を続けている。「宣告された余命はとうに過ぎましたが、まだまだ生きたいですから」

 「収入が無くなり治療費もままならない健治を、何か手助けしたい」。同僚のギター講師今田昇さん(43)が友人と話し合ったのは昨年6月。「おれたちの共通項は音楽」と企画したのが「ケンちゃんAID」だ。翌月の初回に、多くの音楽仲間が集まった。

 かつては仙台の人気バンドで活躍したケンちゃん。腕を競った往年の仲間がバンドを再結成して参加した。穏やかな人柄を慕い、東京から駆けつけた友人や教え子もいる。次々と協力の申し出があり、エイドは回を重ねた。

 ケンちゃんはエイドが始まるとき「恥ずかしいなあ」と遠慮がちだった。だが、今は違う。一度は断った取材を受けてくれたのも、療養の過程で、現代医療に見放されて漂流する「がん難民」の姿を目の当たりにしたからだ。

 「湯治場には、自分と同じ境遇のがん患者が100人以上いたんです。病気になって初めて知りました。こうした実態を多くの人に知ってほしい」。75万人ともいわれる「がん難民」を生み出した医療の現実に、少しでも関心を持ってほしいとも。

 ケンちゃんは今、少し体調がすぐれない。そんなときは気もふさぐ。いつも仲間がそばにいることを伝えようと、今田さんたちは2日、エイドの音源をCDにして届けた。

 マカナ店長でバンド仲間だった佐藤洋一さん(43)は言う。「生きがいを持つことで自己免疫力が高まり、がんを克服した人はいくらでもいるでしょう。音楽を通して彼もそうなってほしい」

 支援活動で、音楽の力や社会の優しさを再発見した人もいる。同僚のギター講師斎藤稔さん(53)は「応援しているつもりが、実は彼から気付かせてもらうことの方が大きいと感じるんです」

 エイドの舞台に毎回掲げられるフラッグには、英語でこう記されている。「おれたちはケンちゃんのリズム、笑顔、そして命を愛してる」
 ケンちゃん、きみは一人ではない。再びスティックを握る日が近いことを、みんな信じてるぜ!

 10回目のエイドは7日午後6時から、青葉区一番町のライブハウス「フック」=022(716)8633=で。入場料1500円。今田さんらは「ケンちゃんAID」への参加を広く呼び掛けている。詳しくはホームページhttp://www.interq.or.jp/rock/macana/ken.html

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