医療ナビ:肉腫(サルコーマ) 骨や筋肉などにできるがん…

医療ナビ:肉腫(サルコーマ) 骨や筋肉などにできるがん…

◆肉腫(サルコーマ) 骨や筋肉などにできるがん。患者数が少なく、「忘れられたがん」とも言われる。

 ◇専門医不足、診断難しく
 ◇小児がんでは1/3にも 種類多く症状さまざま
 東京都内在住のプロダンサー、吉野ゆりえさん(42)が、海外で激しい腹痛に襲われたのは03年10月。帰国後、病院で「卵巣肥大なのでなんともない」と言われ、いったんは安心した。ところが1年後、再び激痛に見舞われた。検査の結果、10センチ程度の腫瘍(しゅよう)が見つかり、「良性の子宮筋腫」と診断。セカンドオピニオンとして受けた別の病院では「良性の卵巣のう腫」と診断され、腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた。だが、病理検査の結果は「後腹膜平滑筋肉腫」という悪性の腫瘍だった。術前診断の間違いから、不適切な治療によって肉腫(サルコーマ)細胞が体内に散らばり、その後計5回にもわたり手術を受けている。

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 肉腫は、骨や筋肉、血液などの細胞の性質が突然変異で変化し、増え続ける病気だ。体内のどこにでも発生するが、胃や大腸などの表面を作る上皮細胞が腫瘍化するがんとは区別される。すべてのがんのうち、肉腫は1%程度と少なく、国内の年間発生患者数は1万人程度と推定されている。ただし、15歳未満の小児がんの場合、約3分の1も肉腫が占める。原因が明確でなく、予防法はない。

 肉腫は、がんに占める割合こそ低いが、種類が多い。骨にできる肉腫、軟らかい組織にできる肉腫に大別され、骨にできる肉腫は、骨肉腫や軟骨肉腫、ユーイング肉腫など約10種類、軟らかい組織にできる肉腫は、脂肪肉腫や平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫など約40種類もある。

 症状もさまざま。骨にできる肉腫は、最初から痛みや熱感があったり、骨が折れたりしてから気付くこともある。軟らかい組織にできる肉腫は、逆に痛みや熱感がなく、硬いのが特徴。体外からはわかりにくく、腹痛などの症状で気づくことも多い。

 治療は、手術による外科的方法が基本だ。腫瘍が大きくて手術で完全に除去できない場合、抗がん剤や放射線で治療する。子どもの場合、肉腫の増大が早く、転移しやすい種類も少なくないため、強い抗がん剤が必要とされる。肉腫の種類や進行度によっても治癒率が異なるが、除去できれば治る可能性は高いという。

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 肉腫治療の大きな課題は専門医不足。そもそも患者数が少ないため、的確な診断を下せる専門医がほとんどいない。希少ながんのため、医師にも経験がほとんどなく、診断が難しい。がんの有無を調べる腫瘍マーカーなど診断キットもなく、術前術後の診断の難しさから、間違った治療を受けて亡くなる人が少なくないのが実情だ。

 こうした問題を解消するため、吉野さんらは09年2月、「日本に『サルコーマセンターを設立する会』」を設立した。同7月に開いたシンポジウムで、肉腫治療の拠点施設の設立を訴えたところ、国立がんセンター中央病院(東京都中央区築地)が同9月、国内初の「肉腫(サルコーマ)グループ」を発足。整形外科や小児科、放射線科、腫瘍内科などの医師らが集まり、チームとして肉腫治療に当たっている。

 同会顧問の牧本敦医長(肉腫・小児科)は「がん治療は、標準的な専門医療をどこでも受けられるようにすることが求められているが、肉腫では逆。国立がんセンターなど限られた病院に医師や患者を集中させ、まず医療の質を上げることが重要」と話す。

 肉腫を市民に理解してもらう活動も広がりつつある。同会は最近、冊子「肉腫ってなぁに?~れもまる君の物語~」を作製した。全18ページ。発見から治療までの流れが漫画で描かれていて、子どもでも読みやすいよう工夫されている。肉腫の基本知識や会員が勧める病院も掲載。全国のがん拠点病院で無料配布している。

 代表の吉野さんは「肉腫への理解を深めてもらうとともに、肉腫を『忘れられたがん』にはせず、患者らが希望を持てるよう、一刻も早く肉腫専門の拠点病院を設立してほしい」と訴えている。

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