Dr.中川のがんから死生をみつめる:/54 核医学検査のピンチ

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がんの検査の一つに、放射性同位元素(アイソトープ)を使った「核医学検査」があります。放射性医薬品(放射性同位元素を使った医薬品)を注射したり、カプセルとして内服してもらい、薬が臓器に集まる量や形を専用のカメラで撮影します。

 核医学検査では、アルツハイマー病などの脳の病気や、甲状腺などのホルモンを作る臓器の病気の有無が分かります。ガス状の放射性医薬品を吸い込むことで、肺の働きも診断できます。狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの診断と重症度の見極めにも有効です。がんの診断では、がんが骨へ転移していないかどうかを調べる「骨シンチグラフィー」などで利用されます。PET(陽電子放射断層撮影)検査も核医学検査の一つです。

 この核医学検査が今、ピンチを迎えています。核医学検査で使われる放射性医薬品の85%で、モリブデン99を元に作られるテクネチウム99mという物質を使います。モリブデン99は、カナダやオランダなどの原子炉で生産されており、日本は全量を輸入に頼っています。特に、カナダは世界の3分の1を生産していますが、現在は原子炉のトラブルで、製造が止まっています。

 カナダからの供給が途絶えたため、昨年5月末から、オランダや南アフリカの原子炉で製造したモリブデン99をドイツ経由で空輸して、なんとかやり繰りをしてきました。しかし、アイスランドの火山噴火の影響で航空機が飛行できなくなり、輸入が完全に止まる事態が起きました。

 モリブデン99は、約3日で半分がテクネチウム99mに変わります。テクネチウム99mも約6時間で、放射線を出しながら、別の物質に姿を変えます。核医学検査では、このとき放出されるガンマ線をカメラで撮影するのです。

 このように放射線を出して別の物質に変化するまでの時間「半減期」が短い放射性同位元素は、備蓄することも、船便で輸送することもできません。空輸だけが頼りですから、国内の一部の病院では、検査ができずに手術が延期されるといった事態が起こりました。

 日本の医療は、世界とのつながりによって支えられているのです。

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