研究進み治療に光 分子標的薬、免疫療法など ATL

研究進み治療に光 分子標的薬、免疫療法など ATL

 九州に患者が多い成人T細胞白血病(ATL)の治療には、抗がん剤を投与する化学療法や骨髄移植、臍帯血(さいたいけつ)移植があるが、いまだ根本的な治療法は確立されていない。ただ、がん細胞の増殖にかかわるタンパク質などを攻撃する「分子標的薬」や、人体の免疫力を高める「免疫療法」など、新たな治療法の開発が進みつつある。

 ATLは、原因ウイルスHTLV1がリンパ球に感染して増殖し、平均55年の潜伏期間を経て発症する。感染者の生涯発症率は約5%。発症後の生存期間中央値は約13カ月で、毎年千人以上が亡くなっている。

 化学療法や骨髄移植が現在の主な治療法だが、高齢で発症する人が多く進行も早いため、副作用が強い化学療法や、ドナー(骨髄提供者)探しが容易ではなく体に負担もかかる移植はリスクや制約が大きい。

 協和発酵キリン(東京)によると、同社は分子標的薬の一種である抗体医薬を開発した。「ポテリジェント」と呼ばれる独自技術で腫(しゅ)瘍(よう)を攻撃する能力が従来より100倍以上の抗体を人工的につくり、人体に投与する。がん抗原分子だけを狙い撃つため、副作用の心配が少ないという。2011年の新薬承認申請を目指し、鹿児島県の病院などでATL患者への臨床試験を重ねている。

 免疫療法の一つのANK自己リンパ球免疫療法も、まだ症例は少ないものの、宮崎県のATL患者の病状を大幅に好転させた例があるという。

 リンパ球に含まれ、がん細胞に対し強い殺傷力を持つナチュラル・キラー(NK)細胞を患者から取り出して培養し、活性化・増殖して体内に戻す。同療法に詳しい民間のリンパ球バンク(東京)の藤井真則社長は「分子標的薬との併用で相乗効果も狙える」と語る。

 だが、新薬は医療現場への普及に時間がかかり、免疫療法は健康保険適用外で治療費が高額になるなど、患者や家族を取り巻く状況は険しい。

 九州のある大学の研究者は「申請から承認まで数年かかる新薬も多いが、新型インフルエンザ薬は『優先審査』の対象になり、約3カ月で承認された」と指摘。国が20年前にATLを「風土病」と判断したことで研究が下火になり製薬業界の関心も薄れたとして、「研究費支援も含め、治療法確立は国がATL対策にどれほど本腰を入れるかが大きく影響する」と語る。

=2010/05/09付 西日本新聞朝刊=

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