【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】治療薬研究 学生挑む 福岡大薬学部 「待っている人いる」

【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】治療薬研究 学生挑む 福岡大薬学部 「待っている人いる」

HTLV1というウイルスへの感染が原因となる成人T細胞白血病(ATL)は、その存在が発表されて約30年。いまだに治療法や発症予防法は確立されていないが、大学や医療機関などで研究が懸命に進められている。ATL患者のがん細胞の増殖にかかわるタンパク質をピンポイントに攻撃する-。この新しい「分子標的治療薬」の基礎研究に学生たちが挑んでいる福岡大薬学部(福岡市城南区)を訪ねた。

 きらきら光る透明のプレートに、女子学生が、薬剤を投入した。液体の中に入っているのはATL患者の細胞を培養した細胞株。濃度の違う薬剤を入れ、細胞株の生存率を調べる実験だ。細胞株が死滅すると、液体は試薬の効果でオレンジからピンクに変わる。

 ATL患者に多くみられるタンパク質の種類を特定し、そのタンパク質の働きを弱めることで、がん細胞の増殖を抑えることができるのではないか。その仮説に基づき、福岡大が取り組んでいるのは、ATL患者のがん細胞の増殖にかかわるタンパク質を狙い撃ちする分子標的療法の実験と検証だ。

    ◇   ◇

 新薬の開発は、細胞や動物を使った基礎研究の後、臨床試験などを経て製品化に至る。福岡大の研究はまだ、入り口の細胞実験の段階。うまくいけば、次には、ATLを発症させたマウスを使った動物実験に移ることになる。こうした基礎実験だけで10―20年かかることも珍しくない。さらに製品化には、製薬会社などからの多額の投資が必要となるという。

 九州のATL研究をリードしてきたのは、長崎大と鹿児島大。患者や感染者が多い地域ということもあり、データの蓄積も豊富だ。福岡大にATL治療薬の研究を持ち込んだ小迫(こざこ)知弘助教(35)も、鹿児島大で研究に携わった経歴を持つ。

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 小迫助教は、鹿児島大時代に受けた、ATL患者からの一本の電話が忘れられない。「先生、ワクチンの研究はどうなっていますか」。ワクチン完成のめどは立っておらず、あいまいな答えしかできなかった。

 「待っている人たちがいる。一つでもいい、ATL治療につながる原石を見つけたい」

 福岡大に移ってからは、その思いを学生たちと共有してきた。卒業後は研究から離れ、一般企業などに進む学生もいるが「君たちが取り組んでいる研究は、将来、必ず治療法を待ち望んでいる多くの患者や感染者を救うことにつながるんだ」と訴える。

 薬学部5年の賀茂奈保子さん(22)は「患者や感染者の方が笑顔でいられるよう、新薬の開発に役立つデータを少しでも積み上げていきたい」と語った。

=2010/05/13付 西日本新聞夕刊=

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◆ATL患者や家族からの相談は

NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」=http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/index.html

NPO法人はむるの会=http://htlv1toukyou.kuronowish.com/

◆ATLのことを詳しく知りたい時は

JSPFAD(HTLV1感染者疫学共同研究班)=http://www.htlv1.org/

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