耳・鼻・のど 耳下腺腫瘍:4 カルテに「低悪性度」…もう逃げない

耳・鼻・のど 耳下腺腫瘍:4 カルテに「低悪性度」…もう逃げない

2001年以来、耳下腺腫瘍(しゅよう)を患っていた私は、08年に名古屋に転勤した後も経過観察を続けた。顔面神経が走る耳下腺の手術には顔面まひの危険が伴う。良性のままなら、腫瘍を一生持っていてもいいかなと思い始めていた。甘かった。09年春、腫瘍を触ったところ、口元にピクピクとしびれがきたのだ。

 顔に異変が起きたら、良性から悪性に変わった可能性が高いと聞かされていた。「ついにきてしまったか」

 愛知県がんセンターで検査を受けた。悪性化を覚悟したが、主治医の長谷川泰久(はせがわやすひさ)医師は「それほど悪くなっていません。ピクピクするのは腫瘍が神経に触れているからかもしれません。でも、悪性度の低いがんの可能性はあるので、取った方がいいですよ」。

 11月に再び長谷川医師を訪ねた。手術の相談をするためだ。カルテの文字が目に入った。「低悪性度の可能性」。それを見て決断できた。もう逃げるのはやめよう。がんの可能性が少しでもあるなら手術を受けようと。

 長谷川医師は患者の気持ちをわかってくれる信頼できる医師だ。「良い医師に出会えるのは良い伴侶に出会うよりも難しい」。そう誰かが言っていたが、手術の決断には長谷川医師の存在も大きかった。

 手術は2月と決まった。顔面まひになれば人と会いたくなくなるかもしれない。気になる人に今のうちに会っておこうと思った。

 大学時代の友人と思われる男性が、元傭兵(ようへい)の危機管理コーディネーター「テレンス・リー」としてテレビに出ていることを知った。本名は明かしていないが、あいつだ。思い切って連絡をとると、「懐かしい」。他の友人も誘って酒を飲んだ。リーからは「悪運の強い斉藤なら大丈夫」と励まされた。

 高校時代の友人も励ます会を開いてくれた。幹事をしてくれた友人から帰宅途中にメールが届いた。「みんなが応援してるから大丈夫!」。涙が出た。

 手術前々日の2月10日夜、執刀する長谷川医師から改めて説明を受けた。「良性と思われますが、切除してみないとわかりません。術中の診断で中程度以上の悪性となれば、顔面神経を切除し、首などの知覚神経を移植する手術もします。(全身麻酔中の)斉藤さんは無理なので、奥さんに同意してもらいます」

 かくて、手術の日を迎えた。

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