耳・鼻・のど 耳下腺腫瘍:5 悩み重ねたから決断できた

耳・鼻・のど 耳下腺腫瘍:5 悩み重ねたから決断できた

唾液(だえき)を出す耳下腺の腫瘍(しゅよう)を患っていた私は今年2月12日、名古屋市の愛知県がんセンター中央病院で切除手術を受けた。

 手術は午後1時半から。手術着に着替え、9階の病室から歩いて4階の手術室に向かった。家族が見守る中、扉が閉まっていった。映画やテレビで見たような手術室、照明も同じだ。「眠くなるお薬が入りますよ」。その声を聞くと、まもなく意識を失った。

 気づいたのは手術室近くの回復室。ストレッチャーに乗って病室に戻る途中、考えることは一つ。「顔は大丈夫か」。耳下腺内には顔面神経が走っており、腫瘍の種類や場所によっては顔面まひが起きる可能性があった。

 「顔は何ともないわよ。腫瘍も良性だって」と妻。そばで高校1年の長女が泣いていた。2人は手術が決まってから、私が顔面まひを気にして家に閉じこもりきりになるのでは、とひそかに心配していたという。

 手術は2時間と聞いていたが、3時間かかった。腫瘍が顔面神経に予想以上に広範囲にくっついていて、剥離(はくり)するのに時間がかかったという。術中の診断で悪性度が高いなら、麻酔で意識のない私にかわって、妻が顔面神経の移植手術を受けるかどうか判断することになっていた。妻は誰かが廊下を通るたび、びくびくしたらしい。

 主治医の長谷川泰久医師が手術後に説明に訪れた。「良性でしたが、腫瘍が思ったより大きかったため、耳下腺を7割ほど切除しました。再発防止のためにも正常部分を含めて大きめに切ることになりました。そのため、食事のときに耳の下が汗をかき、赤くなるフライ症候群がおこる可能性が高いです」

 2週間後、切除した腫瘍の細胞を詳しくみる確定診断でも良性とされた。私を悩ませた顔のこぶはなくなった。しかし、見た目はわからないが、3カ月たった今も左ほおにしびれが残る。歯の麻酔が続いているような状態だ。後遺症もありそうだ。

 悪性の人とは比べものにならないと思うが、それでも良性の耳下腺腫瘍がつらいのは、手術による顔面まひの不安と、がん化の不安、この二つと向き合わねばならぬことだ。私も6年間、悩みに悩んだ。

 でも、こうも考えられないだろうか。悩みを積み重ねたからこそできる決断があり、そして、見えてくるもの、出会えるものがあるのだと。

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