【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】ATL妊婦検査 低い実施率 福岡80.9% 全国38位

【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】ATL妊婦検査 低い実施率 福岡80.9% 全国38位

■厚生労働省研究班調査 死亡率は平均の2倍

 九州に患者が多い成人T細胞白血病(ATL)などの原因ウイルスHTLV1の妊婦抗体検査について、厚生労働省特別研究班が2009年に都道府県別実施率を調査した結果、九州7県で福岡県(80・9%)だけが全国平均(87・8%)を下回っていたことが分かった。福岡以外は100―94%。ただ、調査の回答率が約4割のため、実施率100%でもすべての産科施設で検査をしているとは言えず、各県とも実際の実施率はもっと低い可能性がある。

 調査は、全国1668カ所の産科診療施設に質問用紙を送付。妊婦の感染症検査の実施項目を尋ね、639カ所(38・3%)が回答した。

 集計結果は、抗体検査を受けた妊婦の割合ではなく検査を実施している施設の割合で、西日本新聞が入手した都道府県別の数値=表参照=をみると、鹿児島、宮崎、大分、佐賀など20県は100%。福岡は08年の人口動態統計によると82人がATLで亡くなり、人口10万人当たりの死亡率は全国平均の約2倍で8位の高さだったが、実施率は38位と低かった。

 研究班長の斎藤滋・富山大教授は「回答がなかった6割の産科施設の実態が不明なので、調査結果が実施率100%の県でも、全妊婦の抗体検査が実現しているとは言えない」と指摘。「国内感染者の約半数を占める九州・沖縄で、検査の実施率が四国や東海・中部、近畿より低かったのは意外だ」と話している。

 HTLV1の母子感染対策をめぐっては同研究班が3月、全国一律の全妊婦抗体検査を検討すべきだと厚労省に提言。日本産科婦人科学会も、全妊婦に対し健診時に抗体検査をするよう、産科医の診療指針の改定作業を進めている。

 ■実態調査と公費化急務

 【解説】厚生労働省の特別研究班が調査した都道府県別のHTLV1妊婦抗体検査の実施率は、「本当の数値を底上げした形になっている」と指摘する専門家が少なくない。関連質疑があった18日の衆院決算行政監視委員会でも「意識の高い産婦人科医が回答した結果で、あまり信ぴょう性はないのでは」と指摘された。

 それでも「指標」とせざるを得ないのは、「実態」が把握されていないためだ。実施率94・1%だった熊本県は、2008年に県内すべての産科医療機関を対象に調査。妊婦の86%が健診でHTLV1抗体検査を受けたとの集計結果をまとめたが、これも回答率は54・1%にとどまり、残りの実施状況は不明だ。

 難治性血液がんの成人T細胞白血病(ATL)や神経難病を引き起こすHTLV1は主に母乳で母子感染する。妊婦健診で感染の有無を調べ、感染者に授乳指導をすれば感染リスクを大幅に減らせる。ATL制圧に向け、エイズや肝炎並みに全国一律で抗体検査をし、本当の実施率を100%にする必要がある。

 積極的な対策をとってこなかった自治体は早急に実態を調べ、1人約千―2千円の検査料の公費負担を検討すべきだ。

 HTLV1が生み出す過酷な病で毎年約千人が命を奪われ、感染者は大都市圏にも拡大している。根本的な治療法がない現状では感染予防が最大の防御策。NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」の菅付加代子代表理事は公費負担の意義を「検査が確実に実施される」と訴える。

 ただ、検査を徹底すれば済むわけではない。感染が判明した妊婦を長期的に支える体制も不可欠だ。九州・沖縄の感染者は少なくとも約50万人。自治体が対策を国や医療機関任せにして、問題をこれ以上放置することは許されないだろう。

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