この人に聞く:NPO法人「アットホームホスピス」理事長・吉田利康さん /兵庫

この人に聞く:NPO法人「アットホームホスピス」理事長・吉田利康さん /兵庫

 ◇家での看取りの一助に
 急性骨髄性白血病で前妻の章江さん(当時50歳)を自宅でみとった体験を持つ吉田利康さん(61)が昨年8月、NPO法人「アットホームホスピス」(西宮市大屋町)を設立した。在宅ホスピスケアについて解説する本を出版するなど、医療者からではなく、診療を受ける市民の視点から活動している。病院で亡くなる人が全体の8割以上を占めるという日本の現状に疑問を覚え、「家での看取(みと)りや家庭介護の復権の一助となりたい」と話している。【小坂剛志】

 ◇在宅ホスピスケアを広めたいと思ったきっかけは?
 ◆彼女を亡くした後、自身の介護体験を講演したり、在宅ホスピスケアを解説するガイド本を出版したりしました。彼女は「もしも病気がよくなったら、同じ病気の人の話し相手になりたい」と言い残して亡くなりました。ホスピスケアの概念とは、最期までその人らしく生きることを支えることです。その体験を語ることが彼女の遺志を受け継ぐことになると考えたのです。

 ◇章江さんの最期を自宅でみとった体験をどう受け止めていますか?
 ◆彼女は入院中に「これ以上、他人に体を触られるのはこりごり」と言って、自宅に帰ってきました。当時は、白血病の末期症状で家に帰る人なんていません。家に帰ると、かかりつけ医に往診を断られ、頭を抱えました。ならば自分でやるしかないと、病院の主治医に応援してもらい、家庭介護を始めました。外からは悲惨な家庭に見えたことでしょう。ですが、彼女と家族みんなで最期の日々を過ごせて、私は充実していたんです。それが今の活動の原点です。

 ◇自宅で最期を迎える女性とその家族の姿を描いた絵本「いびらのすむ家」は医療関係者だけでなく、患者からも反響があるそうですね。
 ◆「いびらのすむ家」は、次世代の若者たちに在宅ホスピスケアについて考えてもらおうと私の体験を基に作りました。新聞で紹介されたこともあり、電話や問い合わせが相次ぎました。興味深いのは、若い人からの反応が非常に多いことで、彼らが死生観について関心を持ちだしているのだと思います。私が思うに、病状を本人に伝える「告知」が一般的になったことの影響ではないでしょうか。

 ◇NPO法人の目指すところは何でしょうか?
 ◆日本では8割以上の人が病院で亡くなっています。がん患者のケースだと9割に上ります。全員が「在宅で」とは言いませんが、この数値を1割か2割でも低くすることです。そのお手伝いがしたいのです。結局のところ、医療ではなく、家族や本人が自分のエンディングをどう設定するかが大事だと思うんです。私たちの活動が、それを考えるきっかけになったり、在宅で最期を迎えたくてもやり方が分からないという人に経験を伝えられたらと思っています。

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 ■人物略歴

 ◇よしだ・としやす
 1948年生まれ。99年に前妻を亡くし、インターネットでがんと闘病中の人やその家族、遺族たちと交流を始める。著書に「がんの在宅ホスピスケアガイド」(07年、日本評論社)、「男の介護」(10年、日本評論社)などがある。前夫を食道がんで亡くした恵子さん(48)と05年に再婚し、絵本「いびらのすむ家」を共著。問い合わせはNPO法人「アットホームホスピス」(0798・65・2201)。

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