子宮頸がん:住民検診、効率的な「島根方式」

子宮頸がん:住民検診、効率的な「島根方式」

◇子宮残す目的、感染検査併用 精度向上、間隔工夫し費用減
 ほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で起きる子宮頸(けい)がんについて、住民検診でがんになる前に発見しようという島根県の取り組みが注目されている。検診の精度と受診率をアップさせるとともに、行政の財政負担の削減も期待できるという。【斎藤広子】

 子宮頸がんの住民検診は基本的に20歳以上を対象に、2年に1回行われる。現状では、子宮の入り口をブラシなどでこすって粘膜の細胞を採り、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる「細胞診」が中心だ。一方島根県は、これに加えてウイルス感染の有無を調べるHPV検査を併用する検診を07年に全国で初めて実施した。HPV検査では、細胞診と同様に採取された粘膜の細胞からDNAを取り出し、ウイルス感染の有無を調べる。

 国立がん研究センターが公開する指針では、両検査の併用について「死亡率減少効果を判断する証拠が不十分」としている。さらにほとんどの人がウイルス感染が一過性のため、「過剰診断」となる可能性もあり、集団検診としての実施を勧めていない。

 しかし、島根県立中央病院の岩成治医師は「若い人に多いがんなのだから、検診の目的は死亡率減少ではなく、子宮を残せるようにがんが進行する前に発見することが重要。HPVのみが陽性の人は間隔を狭めて、1年後に検診してもらうだけなので、過剰診断ではない。指針は医療現場の実態からかけ離れている」と指摘する。

 岩成医師が自治医科大付属さいたま医療センターの今野良教授らと同病院を含む全国6施設で05~06年に行った研究では、両検査を受けた2931人のうち、子宮をとらずに治療できる、がんに近い状態の「前がん病変(中等度、以下同)」と、それ以上の進行と診断された計50人を検出する精度が、細胞診で86%、HPV検査で94%だったが、併用すると100%になった。

 さらに同病院だけでその後、細胞診が陰性だった924人の経過を3年間みたところ、HPV検査も陰性だった880人のうち、「前がん病変」以上になった人は0・2%(2人)だったが、HPV検査が陽性だった44人では15・9%(7人)に上った。

 岩成医師はこの結果から「精度が高い上、両方陰性の人は検診間隔を3年間は空けることができる」と考え島根県と共同でモデル事業を立案。07年度から2年間、出雲市と斐川町が併用検診を始めた。

 07年度は車による集団検診で両市町合わせて2582人、08年度は病院などで実施して同4433人が受診し、そのうちの約94%に当たる6620人がHPV検査も受けた。新検査導入をきっかけに大々的にPRしたところ、車検診、病院検診ともに実施前に比べ受診者が1・4倍以上に増え、特に病院検診は30代の受診者が約1・6倍、「前がん病変」以上の検出率も2・2倍に増えた。

 二つの検査を受診した人の9割以上が両検査とも陰性だったことから、受診間隔が3年ですむ人が大幅に増え、県の試算で検診の助成費用は3年間で3割削減できることが分かった。出雲市健康増進課の平井孝弥課長は「がんになる可能性を調べ、数年間は大丈夫とお墨付きを与えられるのが今までのがん検診と違う。その上、財政負担も軽くなる」と話す。同市には東京都や沖縄県など全国から視察が来るという。両市町は09年度以降も併用検診を続け、今年度は県内21市町村のうち17市町村に広がった。

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 厚生労働省の09年1月の調査によれば、全国の自治体でHPV検査を取り入れているのは36市町村(2%)にとどまっている。これに対し、患者団体などからは併用検診の拡大を求める声が聞かれる。

 NPO法人「子宮頸がんを考える市民の会」に参加する米山節子さん(東京都、56歳)の長女朋恵さんは、結婚直前の07年3月に都内の診療所で細胞診を受けたが異常はみつからなかった。しかし、12月に子宮頸がんと診断され、翌年7月に27歳で亡くなった。最後まで前向きに闘病生活を送っていたという。米山さんは「HPV検査も併用していれば、もっと早く異変がわかったのでは。併用検診の自治体が増えて、一人でも娘のような思いをする人が減ってほしい」と訴えている。

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 ◇子宮頸がん
 子宮の入り口(頸部)にできるがんで、発症する日本人女性は年間約1万5000人、死亡者は約3500人と推計されている。ほぼ100%がHPVの感染が原因。HPVはヒトの皮膚や粘膜にいるありふれたウイルスで、性交渉経験のある女性の約8割が生涯のうち一度は感染すると言われている。感染してもほとんどが一過性で、免疫力によってウイルスは自然に消失するが、感染が続くと、数カ月~10年ほどで正常細胞ががん化し始める。がんがごく初期なら子宮を残したまま治療可能で、さらにかなり進行しないと自覚症状がないことから、検診での早期発見が重視されている。

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