【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】支援策探るシンポ 5日福岡市で 登壇者に聞く

【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】支援策探るシンポ 5日福岡市で 登壇者に聞く

成人T細胞白血病(ATL)などの原因ウイルスで九州に感染者が多いHTLV1について、患者や感染者への支援の在り方を探るシンポジウム「知ってください! HTLV1のこと」(西日本新聞社など後援)が5日午後2時から、福岡市・天神のエルガーラホールで開かれる。当日の司会者で自らも感染者であることを公表しているKTS鹿児島テレビの山本慎一アナウンサー(47)と、パネリストの一人の古賀克重弁護士(43)にHTLV1対策への思いを聞いた。

 シンポは、NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」(鹿児島市)の主催で入場無料。事前申し込み不要。問い合わせは、同会=099(800)3112。

 ●知ることが対策の第一歩

 ▼アナウンサー 山本慎一さん

 HTLV1を初めて知ったのは25年ほど前、KTSに入社した年です。うちの局が母子感染の特別番組を放送したんです。鹿児島でATL対策が始まって間もないころでした。「授乳制限の効果がよく分かった」という感想から“寝た子を起こすな”的な批判まで、大きな反響を呼びました。

 1988年に妻が最初の子を身ごもり、妊婦健診の抗体検査でHTLV1に感染していることが分かりました。夫婦で話し合って短期授乳を選び、子どもたちへの感染は防ぐことができました。

 以来、HTLV1や関連疾患、骨髄移植を取材テーマとし、骨髄バンクのドナー(提供者)登録もしたのですが、2007年にドナー候補になった際の血液検査で、私もHTLV1に感染していることが判明しました。

 妻からの水平感染が原因ではないかとのことでした。妻は「申し訳ない」と考えたようです。でも私は、感染者の心境を夫婦というチームで分かち合えるようになってよかったなと思うんです。

 不安はゼロではないけれど、発症率は低いので、がんや脳卒中になるリスクの方が高い。過度におびえる必要はないと思っています。

 ただ、矛盾するようですが、感染者が100万人以上で国民の1―2%もいる分、ATLの死者は決して少なくありません。感染拡大を防ぐための全妊婦抗体検査など、国や地方自治体が本腰を入れて取り組むべき重要な問題です。

 HTLV1は、みんなが頑張ったら本当に撲滅できるかも知れないウイルス。感染を予防して偏見や過度な不安をなくすため、正しい知識の浸透が対策の第一歩です。 (聞き手は坂本信博)

 ▼やまもと・しんいち 1962年、山口県萩市生まれ。87年にKTS鹿児島テレビに入社し、現在は報道局アナウンス部長。月―金曜夕方のニュース番組「KTSスーパーニュース」でキャスターを務めている。妻と娘2人の4人家族。

    ×      ×

 ●国の感染症対策は「欠陥」

 ▼弁護士 古賀克重さん
薬害エイズや薬害肝炎などは、国の感染症対策が後手後手だったため、感染が拡大していった。ATLも同じ構造で、ウイルス発見後の放置、九州など地方特有の「風土病」で片付けたひどさ、この二重の放置、不作為があります。

 口蹄疫(こうていえき)も同じですが、人や動物の移動で広がるから感染症なのです。国は九州で終わると考え、感染予防や周知が遅れた。東京など大都市圏で広がり始めてから国のおしりに火が付いた。法的責任を追及されても仕方がないでしょう。ATLについて知れば知るほど「よく放置されてきたな」とあきれます。

 旧厚生省研究班の報告書(1990年度の重松報告)があり「国の責任はあった」と言わざるを得ない。(対策を取らなかった)地方自治体の責任も免れられない。

 厚生労働省は患者重視ではなく行政中心の理論で、エイズや肝炎では製薬企業の利益を命より優先させた。

 ATLでも縦割りで省益優先だったから、20年も30年もたってやっと動きだした。対応する部署をつくり政府としての協議会を設け、被害の実態調査をする必要があります。患者の声を聞くことは国の責務です。

 専門医も限られ、患者も孤立しています。「見捨てられた病気」の理解を広めて感染予防に力を注ぎ、母親が安心して産めるように政治主導でスピード感を持って周知すべきです。

 今回のシンポジウムは、感染者や患者との連携、情報共有ができる場になります。医療関係者を含めて市民全体の問題と認識できる機会、九州は主たる当事者なので「自分たちの問題」としての出発点にしたい。 (聞き手は河野潤一郎)

 ▼こが・かつしげ 1967年、福岡市生まれ。95年弁護士登録、福岡県弁護士会所属。薬害肝炎九州弁護団事務局長。ハンセン病国賠訴訟や薬害エイズ訴訟などを担当してきた。2009年からHTLV1の患者団体を支援している。

=2010/06/04付 西日本新聞朝刊=

◆ATL問題に関する質問や意見をお寄せください。住所、氏名、連絡先を明記の上、あて先は〒810-8721(住所不要)、西日本新聞報道センター「ATL問題」取材班。

ファクス=092(711)6246

メール=syakai@nishinippon.co.jp

◆ATL患者や家族からの相談は

NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」=http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/index.html

NPO法人はむるの会=http://htlv1toukyou.kuronowish.com/

◆ATLのことを詳しく知りたい時は

JSPFAD(HTLV1感染者疫学共同研究班)=http://www.htlv1.org/

トラックバック&コメント

この記事のトラックバックURL:

まだトラックバック、コメントがありません。


子宮頸がん:予防の無料ワクチン、中学生接種へ--境 /茨城 »
« 室蘭・日鋼記念病院にピンクリボン支援販売機を設置