【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】福岡市でシンポ 悩むママ 支え合おう 「自助会」結成へ一歩

【ATL―成人T細胞白血病―制圧へ】福岡市でシンポ 悩むママ 支え合おう 「自助会」結成へ一歩

新しい命をウイルスから守りたい。そのために母親への支援が重要-。福岡市・天神で5日あった成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスHTLV1の周知を呼び掛けるシンポジウム。300人が集った会場では、感染防止に有効とされる妊娠時の血液検査や授乳制限の陰で、女性たちが孤立する現状についても意見が交わされた。議論に耳を傾けた女性たちは「勇気をもらった」と、支え合いの活動へと一歩踏み出した。

 「もし娘を感染させていたら(妻と私が感染者であることを)公の場で言えなかった。母乳をどうするかという悩みは非常に大きい」。司会を務めたKTS鹿児島テレビの山本慎一アナウンサー(47)は、感染防止に有効とされる3カ月間の短期授乳で2人の娘を育てた経験を振り返った。

 日本産科婦人科学会は、来春改定する診療ガイドラインで全妊婦に検査を勧める方針。聖マリアンナ医大の山野嘉久准教授(41)は「ガイドラインを配るだけでは不十分」。本紙の坂本信博記者(37)は、妊婦健診で感染を知った女性へのアンケートで「心のケアが不十分」との回答が71%に上ったことを紹介し、告知後の支援体制が欠けている現状を訴えた。

 会場から、福岡県立大看護学部の古田祐子准教授が「病院に助産師外来をつくり、話をじっくり聴く場を(妊産婦に)提供できるよう、皆さんと行動したい」と発言。「なくす会」の菅付(すがつき)加代子代表(53)は、自身の感染を知って悩む、子を持つ女性たちの自助会「ママの会」を立ち上げる資料を会場で配った。

 昨年、長男の妊娠時に感染を知った2児の母で北九州市の森本雅恵さん(37)は「ぜひママの会のお手伝いをしたい」。5年前にATLで夫を亡くした福岡県春日市の小林祐子さん(46)は「相談先もなく不安を抱えている人と支え合いたい。まずは茶話会の形で始めたい」と話した。

 「ママの会」の問い合わせは、099(800)3112。

   ×   ×

■「行政・医療・市民が行動を」 浅野史郎さんがメッセージ

 ATLと闘いながら、本紙に3月に手記を寄せた元宮城県知事の浅野史郎さんが、5日のシンポジウムに母子感染予防や全妊婦抗体検査の実施を求めるメッセージを寄せた。内容は次の通り。

 自分がATL原因ウイルス(HTLV1)のキャリアー(感染者)で、発症するまでこの病気のことについては、まったく知らなかったことを思い出します。ウイルスへの罹患(りかん)は、母親からの母乳を通じての感染であるということを知り、今なら、この母子感染を遮断すれば病気は防げるということを理解するに至りました。だったら、やるべきです。

 一般の理解が、まだあまり進んでいない中では、妊婦に対する公的な機関が関与した検査が不可欠と思います。地域を限った風土病ではなくて、全国あまねく発生する病気であることがはっきりしているのですから、次に打つべき手もはっきりしています。

 次の世代にHTLV1由来の病気を残さないために、今できることがあります。そのことを、このシンポジウムを通じて、行政、医療機関、一般市民に伝えていき、明確な行動を取ることが求められます。

=2010/06/06付 西日本新聞朝刊=

◆ATL問題に関する質問や意見をお寄せください。住所、氏名、連絡先を明記の上、あて先は〒810-8721(住所不要)、西日本新聞報道センター「ATL問題」取材班。

ファクス=092(711)6246

メール=syakai@nishinippon.co.jp

◆ATL患者や家族からの相談は

NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」=http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/index.html

NPO法人はむるの会=http://htlv1toukyou.kuronowish.com/

◆ATLのことを詳しく知りたい時は

JSPFAD(HTLV1感染者疫学共同研究班)=http://www.htlv1.org/

◆ニュース特集「ATL-成人T細胞白血病-制圧へ」はこちら

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