【話の肖像画】改革は納得だ!(下)国立がん研究センター理事長・嘉山孝正氏

【話の肖像画】改革は納得だ!(下)国立がん研究センター理事長・嘉山孝正氏

 ■現場は説得すればいい

 --医療政策ではどんな抱負がありますか

 嘉山 僕は医療の透明度を増すため、エビデンス・ベースド・診療報酬(=根拠のある医療の値段)にしたい。今までは、こっちを上げたら、あっちを下げるとかで、根拠が分からず、患者さん目線でなかった。今年度の診療報酬改定では、外科で手術の材料費がこれだけかかる、人数がこれだけ必要と、数値を出してもらって手術料を決めた。だから、内科も数値を出せと。例えば、医者の診断能力が高ければ、検査は少なくて済むし、患者の肉体的負担も少ない。税務署の査察みたいに、病院に突然行ってカルテを調べて、脳波検査からCT検査から、けいれん剤投与から全部やってたら「適切でない」と言ってやればいいんだ。

 僕、何で学んだかっていうと、昔、東北大学にいたころ、脳梗塞(こうそく)の予防にアスピリンと手術のどっちが有効かっていう世界規模の比較試験に参加したんだ。結局、世界規模では手術が負けたんだけどね。日本の手術データだけなら勝ったんだけどさ。とにかく、その比較試験をやっていたころ、ある日突然、とりまとめ役のカナダ人が「この患者のカルテ見せてください」って抽出検査に来た。比較試験の信頼度を高めるためなんだ。はあ、これがモニタリングか。アングロサクソンのやることは厳しいなあ、と思った。で、学会誌に結果の論文が載った途端、多くの手術をしていたアメリカの外科医は失業。すごい世界なんだよ。だから、日本の医療もいずれそうなる。

 --現場は抵抗しませんか

 嘉山 説得すればいいんだよ。だって、いいことするんだもん。患者のためだもん。僕、湘南高校のころ、川崎の工場からモクモクと煙が上がるのを見て、大丈夫かなと思っていた。新聞でも騒がれていた。でも、誰も何もしてなかったんだ。結局、川崎ぜんそくが起きて、企業は莫大(ばくだい)な補償金を払った。みんな不幸でしょ。最初にちゃんと直せばよかったんだよ。水俣病だって、熊本大学の学者がチッソが原因だって言ったんだ。ところが、御用学者が「原因はチッソじゃない」って。それで原因究明が5年遅れた。その分、患者も増えてチッソの賠償金も増えた。だれも幸福にならなかった。現場を説得すれば改革はできるよ。後から振り返れば、健全になるチャンスなんだから。

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