ひと:やなせななさん がん体験を乗り越え歌う尼僧

ひと:やなせななさん がん体験を乗り越え歌う尼僧

奈良県高取町、浄土真宗本願寺派教恩寺の若き住職。同時に、法話を交えてオリジナル曲を歌うコンサートを、全国の寺院で年40回以上開いている。「号泣する人もいて、さまざまな悲しみを抱えるみなさんに、歌が光となっているんだと実感します」

 寺に生まれ、読み書きを覚える前にお経をそらんじたという。宗門大学に進み、得度するのは自然の流れだった。しかし「自覚ゼロ、名ばかりでした」。バンド活動に熱中し、卒業後もシンガー・ソングライターの活動を続けた。

 転機は突然だった。06年、子宮体がんで、子宮、卵巣を摘出した。30歳で未婚。「体より心の傷が大きかった」。薬の副作用と更年期障害の症状に苦しみ、感情をコントロールできない状態が続いた。

 しかし08年、友人の寺で講演したことが流れを決めた。身近な者の死、戦争、震災。曲づくりの背景を説明し、がん体験も語った。「身じろぎせずに聞いてくれました。僧籍を得て10年。信じる私と歌う私が初めて重なりました」

 童謡も交え、柔らかく透明感のある声で歌うコンサートは懐かしさと温かさに包まれる。評判は口コミで広がり、宗派を超え、全国の寺院から依頼されるようになった。

 曽祖父の後、空席となっていた住職を継いだのは3月。「何もできない、ちっぽけな私でも大丈夫かなと思えるようになったんです」。たくましさを感じさせる笑顔で語った。【鈴木敬吾】

 【略歴】本名・梁瀬奈々。龍谷大卒。04年CDデビュー。4月に自伝エッセー「歌う。尼さん」(遊タイム出版)を出した。34歳。

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