ひと・ヒト・人:がん告知機に詩集出版、山下敏郎さん /鹿児島

ひと・ヒト・人:がん告知機に詩集出版、山下敏郎さん /鹿児島

◇人生とは…珠玉のつぶやき--山下敏郎さん(68)=錦江町
 「悩みごと消せる消しゴムってないのかなあ……」

 思わず共感してしまう心のつぶやきの「1行詩」約530編を収めた。語録のタイトルは「山下ジィの思いつき語録」。どの作品も機知と風刺に富み、心にスーッと染み込むものばかりだ。

 出版の動機は胃がんの告知だった。06年1月のこと。早期発見だったが、胃の3分の2を切除した。

 「頭がガーンとなりましたよ。やっぱ、がんだから……」と冗談交じりに笑うが、「ほんとはショックでしたよ。とっさに命を考えました」

 「それまで面白おかしく川柳を楽しんでいた。告知後、だんだん人生や愛、命などについて考えるようになった。すると、思いを自由に表現できる1行詩になった」

 作りためた作品は約2000編。言葉がひらめいたときは必ずメモする。車の運転中に思い浮かぶと、わざわざ車を止めて書き留めるほどだ。

 「1行詩は人に見せようと思って作ったわけではなく、自分を元気づけるためだった」。無心に書いていたが、ある出版社の原稿募集を見た。「本を出すチャンスなんて一生に一度あるか、ないかだ」と応募。「優秀賞」を受賞し、自費出版が実現した。

 合併で錦江町になる前の旧田代町職員を02年に定年退職。在職36年のうち23年は教育委員会で勤務し、高齢者施設や学校などを回った。「女子中学生から付けられたニックネームが『山下ジィ』」と照れ笑いする。

 昨春初版500部を出版し、好評を得て地元を中心に完売。今は1行詩を書いた色紙や壁飾りを誕生日を迎えたお年寄りらに贈っている。

 「自慢するもの何も無いです、でも幸せです」「普通の生き方は呼吸と一緒、吸っただけ吐けばいい」「今日は昨日の続きではない、考えを変えよう」--など、さりげない言葉の中に「前向きに生きるヒント」がちりばめられている。

 胃がん告知から5年目。今では手術したことがうそのような日々を過ごし、サイクリングやジョギング、筋力トレーニングなど欠かさない。

 「私の1行詩を読んだ人が『自分では言葉が見つからなかったことを、あなたが言ってくれた』と思っていただけるようなものを書きたい」。創作が元気のエネルギーの一つになっている。

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