末期がんを克服 弁護士が闘病記

末期がんを克服 弁護士が闘病記

「末期の大腸がん」にかかりながらも、計4回の手術を経て克服した青森市の弁護士、小野允雄(まさ・お)さん(70)が闘病記「余命半年からの生還」(幻冬舎ルネッサンス)を出版した。8年間、死の恐怖と闘いながらつづったノートをもとにした記録は「患者に希望が与えられれば」と、法を扱う弁護士らしい冷静な目で自分の病気を見つめている。(有近隆史)

 「悪性の腫瘍(しゅ・よう)です」。医師に大腸がんを告げられたのは2002年1月24日。30歳のころから年1回、胃がんの検査はしていたが、大腸がんの検診はしたことがなかった。

 実はその5年前、旅行先で初めて血便が出て気にはなっていた。しかし、胃の検査でひっかからなかったことや、当時は約60件の事件を抱え、多忙だったこともあり、受診できずにいた。偶然空いた1日を利用して病院に行ったところ、残酷な宣告を受けた。62歳の時だった。

 その年の2月28日、東京の国立がんセンターで大腸がんの摘出手術を受けた。手術の結果、盲腸などに転移していることが分かった。

 その後も抗がん剤治療をするため、週に1回、青森から東京に飛行機で通院。さらに肝臓への転移や腸閉塞(へい・そく)などで最初の手術から1年半あまりで計4回の手術を受けた。

 それでも仕事は続けた。入退院を繰り返したが、休んだのは最長でも3週間。退院して2、3日後には仕事を始めた。

 「仕事をしていると、病気のつらさ、恐怖から逃げられた」。何もしないとがんのことを考え、頭がおかしくなりそうだったという。だから、週末もあえて裁判の準備書面を作る仕事を入れ、気を紛らわせた。

 実は最初の手術の際、医師から家族には「再発の可能性が高く、5年生存率は0%」と言われていた。小野さんには告知されず、本人が知ったのは今から2~3年前。手術記録を見ると、大腸がんの進行程度は一番重い「ステージ4」、転移が17個もあった。

 だが、「生存率0%」の宣告を見事に裏切って、半年に1回の検査でも再発の兆候は見られず、ほぼ完治した状態に。そこで「末期がんから生還した人間がいることを知らせたい」との思いで、当時の心理状態や病状などを記録したノート7冊を参考にしながら、闘病記を書き始めた。

 小野さんを支えてきたのは妻と子ども3人の家族の存在だ。「家族も5年生存率0%と言われ、苦しんできた。自分1人ではなく、家族でこの病気を支えてきた」と小野さんは話す。だから本には家族からその時の心境などを聞き取って、家族目線での記述も交えた。

 生存率0%を手術後すぐに知っていたら、「恐怖の日々を考えると、すべてが告知されることが必ずしも正しいとは言えない」と本の中で率直な心情を吐露する一方で、「がん告知はすべきだ」というのが持論。「末期状態患者に真実を告げ、死と対峙(たい・じ)させることこそ、原則として、適切な処方であるとする見解」を「正しいと考えている」と書く。

 小野さんは力を込めて言う。「がんはきちんと治療すれば治る。だから最後の最後まであきらめないでほしい」

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