抗がん剤治療/大学連携で専門医増やそう

抗がん剤治療/大学連携で専門医増やそう

日進月歩で進む日本のがん治療で、立ち遅れているとされている分野がある。進行がんの患者に、抗がん剤を投与するなどの化学療法を行う専門医の育成だ。数が不足している。
 がん治療は胃や大腸など臓器別に主として外科医が手術を担当し、抗がん剤治療にも対応している。しかし、患者数が増えるとともに二つの領域をこなすのは難しくなっている。
 抗がん剤もさまざまなタイプの新薬が数多く開発されている。個人差はあるものの、延命効果も認められてきたことから、高度な知識を有する専門医が薬剤を扱い、継続的に治療に当たることが求められている。
 文部科学省は全国の大学が連携して専門医を育てる「がんプロフェッショナル養成プラン」を2008年度に始めた。
 東北では、秋田大を中心とする北東北3県と、東北大が中核になる南東北3県の大学がそれぞれ手を組んで共通の養成コースを設けた。複数校が共同で行うことで、この分野のすそ野の拡大を図る。
 高齢化率が高まる中、がん治療の重要性は増すばかりだ。分業が図られ、横断的に診断できる医師を増やすことは、より患者の立場に立った医療が期待できる。着実に進めてもらいたい。
 抗がん剤は再発抑制や転移がんの治療などに使われる。米国では40年前から抗がん剤の外来治療が普及し、専門医が中枢を担っている。
 この分野は、がん薬物療法、または腫瘍(しゅよう)内科と呼ばれる。日本でも注目はされていたが、長年、抗がん剤の効果が疑問視され、使用に慎重だったという事情もあり、進展しなかった。
 東北大、山形大、福島県立医大の養成プランは、大学院博士課程に腫瘍専門医コースのほか、同じように担い手不足の放射線治療と緩和ケアを学ぶコースを設けた。インターネットを活用して共通の講義が受けられる。
 また、修士課程には、がん専門の看護師や薬剤師の養成コースなどを新設した。抗がん剤治療は患者によって、さまざまな副作用を伴う。チーム医療の観点から、それぞれの立場で善処できる人材を育てるという。
 宮城県立がんセンター、山形県立中央病院など各県にある「がん診療連携拠点病院」と提携するのも特徴だ。病院は臨床実習などを引き受けて協力する。
 課題は受講生の確保だ。養成プランは3年目。期待したほど希望者が集まらず、東北大の腫瘍専門医コースでは目標の6割ほどにとどまっている。
 進行がん患者と向き合う仕事は精神的にも決して楽ではなく、二の足を踏んでも不思議ではない。「がんの最新メカニズムなど研究テーマとしての魅力を取り入れながら、若い医師の関心を高めていきたい」(養成プラン責任者の同大教授)と息長く取り組む姿勢を強調する。
 がん患者は「自宅でじっくり治したい」「仕事を続けたい」など切実な思いを抱えている。多種多様な声に耳を傾ける専門医の育成、医療体制の整備が急がれる。

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