Dr.中川のがんから死生をみつめる:/66 緩和ケアに、もっと人手を

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サッカー・ワールドカップは、国の威信をかけた「戦争」といえます。実際、サッカーの試合での遺恨がきっかけとなって、戦争が起きたこともありました。今年のワールドカップでは、スペインがオランダを降して初優勝を手にしました。オランダは、15世紀から17世紀にかけてスペインによって領有されていましたから、「因縁の一戦」だったとも言えます。

 スペインは、日本も目指した美しいパスサッカーを貫いて優勝しました。チームのきずなが、個人のパワーをさらに高い次元に昇華させた結果だと思います。

 チームプレーは、がんの緩和ケアでもとても重要です。進行・末期がんの患者が抱える苦悩はさまざまです。一番大切なのは、肉体的な苦痛の緩和です。なかでも、がんによる痛みを取り除くことが重要で、医療用麻薬を適切に使うことが求められます。ところが、日本での医療用麻薬の使用量は、先進国では最低と、取り組みの遅れが目立ちます。

 さらに、吐き気や食欲不振、体重と筋肉の減少、身の置きどころのないだるさなど、患者さんをさいなむ症状はさまざまです。こうした苦痛の緩和には、薬剤師、栄養士、理学療法士などの職種の人たちも大事な役割を担います。

 身体の症状以外にも、つらいことはあります。不安やうつ状態などの精神的苦痛、仕事、家庭、お金の問題といった社会的な苦痛、人生の意味や自分という存在そのものにかかわるスピリチュアルな苦痛などです。緩和ケアでは、これらを「全人的な苦痛」としてとらえ、家族を含めて支えます。精神科医や心療内科医、患者さんの心理面をサポートする臨床心理士、生活や仕事など社会的な問題も含めた相談に応じるソーシャルワーカー、さらには宗教家やボランティアも参加します。

 医療現場では、医師や看護師も足りませんが、それ以外のスタッフ不足も、日本のがん医療の弱点となっています。プレーヤーの数が足りなくては、チームワークどころではありません。「死を忘れた日本人」が、このような事態を生んだともいえるのではないでしょうか。

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