Dr.中川のがんから死生をみつめる:/67 「死の質」低い日本

Dr.中川のがんから死生をみつめる:/67 「死の質」低い日本

がん患者さんの「全人的苦痛」に向き合うためには、職種を超えたチームプレーが欠かせないと先週お話ししました。実際、がんの患者の治癒率や生活の質を高めるため、厚生労働省が全国に整備している「がん診療連携拠点病院」には、「緩和ケアチーム」を設置することが義務づけられています。

 緩和ケアチームは、身体症状の緩和を担当する医師、精神症状の緩和を担当する医師、緩和ケアの経験を持つ看護師と薬剤師などから構成される医療チームです。一定の条件を満たすと診療報酬を請求できるようになっていて、全国の病院に広がっています。

 がんの治療にあたる主治医から緩和ケアチームに、診療がバトンタッチされるわけではありません。病棟の主治医や看護師は引き続き担当を続け、チームがそれをサポートする形になります。ただし、病状が進行すれば、緩和ケアチームが中心になっていく場合も少なくありません。

 緩和ケア病棟(ホスピス)は、家族が過ごすスペースなど、通常の病棟に比べて、ゆったりとした作りになっていて、人生の最後の時間を穏やかに過ごす配慮がされています。一方、ホスピスに移る際は、多くの場合は主治医が変わりますから、「治す」から「癒やす」に「ギアチェンジ」される傾向がみられます。この点、緩和ケアチームがかかわる場合は、「治す」と「癒やす」の重きが変わっていくイメージです。

 ようやく、整備され始めたわが国の緩和ケアですが、国際的に見るとまだまだ遅れています。14日にシンガポールで、「死の質ランキング」が発表されました。各国の緩和ケアの実情について、医療関係者などから聞き取り調査を行い、医療費などの視点を含めて評価したものです。トップは英国で、オーストラリア、ニュージーランドが続きましたが、日本は23位と低い評価でした。リポートでは「緩和ケアの費用が高くつく一方で、在宅医療が遅れている」などと分析しています。

 たしかに、日本で「畳の上で死ぬ」ことは非常に難しくなっています。今後、「死の質」を高めるための努力が必要となるでしょう。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

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