東大と富士通、がん治療薬開発を目的としたスパコン活用を開始

東大と富士通、がん治療薬開発を目的としたスパコン活用を開始

東京大学先端化学技術センターと富士通は8月5日、「がんの再発・転移を治療する多機能な分子設計抗体の実用化」研究プロジェクトにおいて、クラスタ型のスーパーコンピュータによるシミュレーションを活用した医薬品設計・開発を開始したことを発表した。

「がんの再発・転移を治療する多機能な分子設計抗体の実用化」研究プロジェクトは、内閣府や日本学術振興会の支援を受けた最先端研究開発支援プログラムとして位置付けられており、東京大学 先端科学技術研究センター教授の児玉龍彦氏が中心となってプロジェクトが進められている。

同プロジェクトで使用されるシステムは、300ノードの「PRIMERGY BX922 S2」で構成されたPCクラスタ型のスーパーコンピュータ。理論ピーク性能は38.3TFLOPS(テラフロップス)で、「海洋研究開発機構が2002年に運用を開始した『地球シミュレータ』と比べて、電力あたり約40倍の性能を持つ」(富士通 テクニカルコンピューティングソリューション事業本部 本部長 山田昌彦氏)とされる。

今回の説明会で児玉教授は、「進行がんの治療は副作用との戦いである」と説明。「抗体医薬品」は、進行がんに対して、副作用を抑えた”ピンポイント”での画期的な治療を実現できる分子標的薬としてすでに世界で4兆円の市場に急成長しており、現在は各国で激しい研究開発競争が繰り広げられている状況だという。

今回の研究開発のターゲットとされているのは、主に消化器系を中心とした「固形がん」。これには「発生率が高い」という理由のほかに、「2mm以上の腫瘍について、正確な体外PET(断層撮影技術の1つ)イメージング診断が行えるようになった」(児玉教授)といった技術的な要素がその背景にある。同プロジェクトには富士フイルム(ライフサイエンス研究所)も参画しているが、同社がこのイメージング診断に関する技術開発の役割を担っている。

児玉教授は、「この分野では”世界で一番”にならなければ意味がない」とし、関連特許の取得は「まさに1分1秒を争う状況」であると強調。スピードが要求される「創薬」分野でのスーパーコンピュータシステムの有用性をあらためて訴えた。

なお、このスーパーコンピュータシステムが活躍するのは、がん細胞の一部である抗原(タンパク質)と抗体(タンパク質)との相互作用を分子動力学によってシミュレーションを行う人工抗体設計の部分(「分子動力学コンピュータシミュレーション」)で、この領域は東京大学 先端科学技術研究センター特任教授 藤谷秀章氏が担当している。このシミュレーションは、従来の研究開発プロセスでは3~4年かかっても実現が困難とされていたが、同システムを利用することで数ヵ月で実現することを目指すという。
当面は、「とにかく早期に最初の1つを成功させなければならない」(児玉教授)というミッションがあることから、まずは肝臓がんなどの3種類に対象を絞って”世界で一番”で特許を取得し、「ゲノム抗体医薬品」の設計・開発・治験プロセスを経て、5年以内で実用化することを目指す。

同プロジェクトで利用されるスーパーコンピュータシステムは、上述のように300ノードの「PRIMERGY BX922 S2」PCクラスタシステムとなっており、CPUにはインテル Xeon プロセッサー X5650×2(1ノードあたり)、計600CPUが搭載されている。理論ピーク値は38.3TFLOPS、ノード間のネットワークインタフェースは、InfiniBand QDR(4Gbps)が採用されている。また、ストレージには富士通のディスクアレイ装置「ETERNUS DX80」を5台搭載。RAID6での実効容量は1PB(ペタバイト)とされる。ちなみに、同システムの東京大学先端科学技術研究センターによる買取価格は4億円となっている。

なお説明会では、同センターのサーバルームに配備されたスーパーコンピュータシステムの実機が公開された。

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